宮藤官九郎 いまなんつった? 579
「させて頂きます」

週6で芝居の稽古をしています。いや、させて頂いてます。
どうなるか分からない。
3月14日現在、WHOのパンデミック宣言、安倍首相のイベント自粛要請を受け、公演中止や延期を余儀なくされ、あちこちで同業者が悲鳴をあげている。
だけど稽古は中断できない。
事態が収束し幕が開く可能性もゼロじゃない。だから仕上げなくちゃ。

正直言うと、稽古をやってる時間だけ平穏でいられるんです。だって面白いもん。作っている自分が言うのもナンですが。
売れない芸人役の柄本佑くん、要潤さんが、毎日力いっぱいボケたり突っ込んだりしてくれる。昨年『いだてん』で田畑政治事務総長を熱演してくれた阿部サダヲくんが稀代のクズ男を怪演。
シアターコクーン芸術監督の松尾スズキさんが「俺、去年もデリヘルの店長役だったよ」とボヤきながらロボットダンスを披露してくれる。
こんなに面白いものが陽の目を見ずに葬り去られる可能性があるの?
最悪の事態を頭の片隅で想像しながら、毎日ゲラゲラ笑ってる。いや、笑わせて頂いてます。

この「させて頂いてます」問題については数年前にも書きました。
最近はインタビューで「映画に出る」と発言したら知らない間に「出させて頂く」に訂正されたりする。
いつから役者はドラマに"出る"ではなく"出させて頂く"身分になってしまったのか。
確固たるデータがあるわけでなく、あくまで私見ですが、東日本大震災直後の自粛ムードが関係しているような気がしてなりません。