9月入学制導入 前川氏「今じゃない」、尾木ママ「踏み出す時」〈1〉
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f5e23ca186d4386e3afd408c5b4dace07af505a

◎課題山積「今じゃない」 元文科次官 前川喜平氏

 白紙から考えれば国際化などの利点があり、入学は4月より9月の方が良いとの立場だ。
本当に実現しようとするならば国民の理解が不可欠だし、時間とお金も必要になる。
新型コロナの対策に追われる中、議論は今じゃない。

 義務教育への導入はそう簡単ではない。学校教育法上、4月1日時点で6歳の子が小学校に入る。
そのまま9月入学に移ると、初年度は6歳0カ月から7歳5カ月までの児童が混在する。生まれた時期がこれだけ違う発達段階の子を一緒にするのはむちゃだ。

 一時的に増える児童に対応するため、教員や教室の手当ても要る。
9月の誕生日を境に学年が異なると、幼稚園や保育所で同じクラスの子どもを分断する。親が望んでいるとは思えない。

 インターネット上で、9月入学制導入を求める署名活動を始めた高校生たちの気持ちは受け止める必要がある。大学受験などを控え、不安は理解できる。
既に自由化された大学の9月入学枠を広げたり、1月の大学入学共通テストを7月にも実施したりする対応はできる。
高校の在学期間を延ばす特例措置も可能だ。

 保育所や幼稚園、小中学校まで巻き込む話ではない。学校の再開状況も各地で異なり、全国一律の9月入学はナンセンス。まずは学習権保障の方策を考えるべきだ。
導入を主張する政治家は、有権者の耳目を引く道具に使っているのではないか。

 安易に休校し、大きな損失が生じた。特に小学校低学年は今という時間が大事で取り返しがつかない。休校するかどうか、もっと厳密に考える必要があった。
科学的根拠を見いだせないなら、感染防止の措置を万全に取った上で再開すべきだ。休校を続けるなら、オンライン授業の設備を優先的に導入してほしい。

 文部科学省は9月入学を必死で止めるはずだ。私が文科事務次官なら、大学の9月入学枠拡大など「やった感」を出しつつ、デメリットを最小化する。
それこそソーシャル・ディスタンスを確保するため、30人学級を進めてはどうか。
教室の人数が減れば子ども同士の距離を取ることができる。新型コロナ対策のレガシーにもつながる。