■『ある戦後史の序章』
 (「石田一郎の手記」西日本図書館コンサルタント協会 所収)
 「満州や北朝鮮からの初期の脱出者は悲惨で、今も念頭を去らないいくつかの
エピソードがある。北朝鮮で農業を営んでいた老夫婦は、年頃の娘二人を連れ、
辛苦のすえやっと38度線近くの鉄原にたどりつ いた。
 そこで見たものは、日本人の娘達がつぎつぎにまずソ連兵に犯され、ついで
朝鮮人の保安隊に引き渡されてさらに散々に辱められたうえ、虐殺されている
光景 であった。折角ここまで連れてはきたが、最愛の二人の娘達もまもなく
同じ運命をたどるであろうことを不悩に思い、近くの林の中の松の木に経って
自決させ、 これはその遺髪ですといって私に見せてくれた」