就職氷河期世代の私が「9月入学」に反対した理由(1)
https://news.yahoo.co.jp/articles/053b9ccf6d8f66ac245d8661ee49127a223ce874

21年度からの9月入学導入が見送られることになった。
小学校1年生と年長の年子の親であるわたしは、そのニュースを観て胸を撫でおろした。
わたしは就職氷河期世代のど真ん中の人間である。
あの地獄を肌感覚で体験した人間だからこそ、この議論が続く中、不安のあまり9月入学の情報ばかりを追ってしまっていた。
自分の子どもたちの学年の人数が場合によっては1.4倍になってしまい、受験や就職において不利になる可能性があったからだ。
氷河期世代を生み出したことへの反省もないままに、日本社会が再び新たな氷河期世代を生み出すことは、絶対にあってはならない。(弦巻 星之介)

わたしたちが二十代だったとき、若年層の完全失業率が大幅に上昇して異常値を示した(2003年の11.6%がピーク)
1994 年からの約10年間で、当時の若年層に占める非正規労働者の割合は22.2% から47.7%にまで上昇し、
他の世代と比べて大企業に勤める割合は今でも非常に少ない(いずれも総務省統計局の調査)。

当時はまだパワハラやセクハラに対する意識が低かった。
面接では「落とす」ための圧迫面接という手法が広く用いられたため、精神を病む学生も多かった。
就業してからも、今では法律で禁じられているサービス残業や過剰労働で安い労働力として使い倒された。

そして何よりも不幸だったのは、わたしたちの世代は長らくそのことを自分たちの業だと考えてきたことだ。
原因が社会の側にあることに気づかず、思い通りに出来ないのは我慢が出来ない自分たちが悪いのだと信じ込まされ、自分たちを責めて来た。

わたしたちの人間性はやたらと「勝ち」か「負け」かで語られるようになった。
世代の中で競わされ、分断され、親世代を始めとする上の世代からは「それは甘えだ」と斬り捨てられた。
高度成長期の発展を自分たちの手柄故だと考える上の世代には、当時の若者たちの苦しみがわからなかったのである。