食品の放射能―安心へ手だてを尽くせ

食品に含まれる放射性物質の基準が厳しくなる。福島第一原発事故の直後から暫定基
準が使われてきたが、やっと見直されることになった。
31日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で、食品に含まれる放射性セシ
ウムによって受ける放射線の上限を年間1ミリシーベルトとする案が厚労省から示さ
れた。
現行の暫定基準は年間5ミリシーベルトで、飲料水、牛乳・乳製品、野菜類、穀類、
肉類と、五つの食品群ごとに、1年に食べる量を考えて1キログラム当たりの規制値
を決めた。
幸い、農産物などから検出される放射能は減っている。食品ごとの新しい規制値は来
春施行の予定という。国民の健康を守るのはもちろん、消費者の安心につながるよう、
十分な説明など手だてを尽くしてほしい。
「1ミリ」という値はどうか。
内閣府の食品安全委員会は先週、「健康影響が見いだされるのは、食品中の放射性物
質による被曝(ひばく)が生涯の累積でおよそ100ミリシーベルト以上」とする答
申をまとめた。100ミリシーベルトはこれ以上だと発がんの影響が科学的に明らか
で、0.5%リスクが高まるとされる。今生まれた子供が100年生きるとして、単
純に割ると1年当たり1ミリシーベルトとなる。
同じ量でも、少しずつの方がリスクはより低いとも考えられており、安全側に立った
数字といっていいだろう。
課題は残る。食品安全委の答申は食品だけから被曝する、との仮定だが、外界からの
放射線を無視できないのは当然だ。
大切なのは、食品からも外界からも、ひっくるめて被曝を減らすことだ。除染の目安
を検討する文部科学省が扱うのは外部被曝だけだが、ばらばらでは困る。政府全体と
して、その両方を減らす道筋が必要だ。
消費者の納得のためには、実際の食事をもとにしたデータで示すことも重要だろう。
厚労省の推計では、ふだんは年間、食品からの放射線は約0.4ミリシーベルトだが、
福島原発事故によって食品から余計に被曝する量は1年で約0.1ミリシーベルトと
いう。
早野龍五・東大教授は、子どもたちが食べた学校給食をまるごとミキサーにかけて測
る方法を提案している。給食の食材は保存されているので、追跡できる。横須賀市は
1週間分を測定して公表しており、最近の結果は「不検出」だった。
空間線量の高い福島県での調査を最優先に、との提案だ。ぜひ進めてほしい。

http://www.asahi.com/paper/editorial20111101.html