メンケス病女児の発症機序の一端を解明 / 自治医科大学
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自治医科大学 分子病態治療研究センター 人類遺伝学研究部 松本 歩 講師、松村 貴由 教授、岩本 禎彦 前教授、放射線医学講座 森 墾 教授、小児科学 小坂 仁 教授らの研究グループはメンケス病女児の家系を3世代にわたり解析し、その発症機序を解析しました。X染色体の不活化の偏りの向きが親子や兄弟で逆になる症例の報告は以前にもありましたが、X染色体組み換えの位置を同定して機序を検討した報告はありませんでした。

 X染色体潜性遺伝性疾患の1つであるメンケス病は、銅輸送ATPaseの1つであるATP7A遺伝子の異常により腸管での銅輸送障害が生じ、重度の中枢神経障害などが出現する疾患です。通常はX染色体の不活化は通常ランダムに父親からと母親からのX染色体が不活化されて保因者女性は発症を免れます。メンケス病を発症した女児の家系について3世代にわたりX染色体の不活化率の偏り、RNAシークエンシング(遺伝子発現量の網羅的解析)、全ゲノムシークエンシング(遺伝配列の網羅的解析)を行った結果、この家系ではX染色体不活化が片方のX染色体に極端に偏った状態が3世代にわたり確認され、祖母と母については疾患原因遺伝子を含む染色体の方が優先的に不活化されていたため発症を免れていました。一方で、患児においては正常遺伝子を含む染色体の方が優先的に不活化されていたためにメンケス病が発症したことがわかりました。

 本研究では、さらに母親から患児への遺伝の際にX染色体の組み換えがどの部位でおこったのかを明らかにし、なぜこのような現象がおきたかについての考察を加えました。 今後症例の蓄積により、X染色体の不活化の偏りの機序が明らかになって行くことが期待されます。
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