ブラックラグーンは暴力描写が多いけど面白い。
ノリだけに見えがちだけど、レヴィの心の問題に決着をつけるくだりは意外と正鵠を射ている。

ブラックラグーンはいわば現代の海賊稼業、乗員のレヴィはアメリカ系中国人。
スラムで育って、悪いことはなんでもやって、警官達に暴行されて、
キレイ事はなにも信じられなくなって、金と暴力と船の仲間だけを信じて生きている。

日本人のサラリーマンを成り行きで仲間に引き入れたのはいいものの、
普通に育ちのいいロックの価値観で自分を測られるとイラついてひどい暴力が出る。

ロックの主張は、運び屋の仕事以外で惨い小遣い稼ぎをするなという、至極当然のものだ。
行きがけの駄賃に人質さらって身代金要求したり、墓場泥棒とか、そういことをするなっていうだけ。
プロの悪党には悪党なりの矜持ってもんがあるわけだ。

それでレヴィは八つ当たりにばかすか銃を撃って大量殺人をやらかすし、
ロックにも仲間になれないとか帰れとか言って喧嘩をする。

しかし、問題はレヴィの心にある。船長のダッチには解っている。

「お前、どっちの側にいたいんだ?」とレヴィはロックに問うけど、
それはヤクザかカタギか、とか、キレイなほうかキタナイほうか、とか。
マトモな方か、マトモじゃない方か、とか、社会の表のほうか裏のほうか、
日の当たるほうか、日の当たらないほうか、メインストリームかアンダーグラウンドか、
そういう問いなんだろうけど。

結局、自分をヤクザでアンダーグラウンドで日の当たらないほうにいるんだと決めつけて、
日の当たるほうマトモな方を憎んでいるのは、レヴィ自身なんだよな。

自分はダメだと決めつけて、おキレイなものや正しいものに見下されているように感じて、苦しみが募る。
それを、独り芝居だ、悲劇のヒロインぶって、犬のように同じところを回ってると散々に看破されるわけだww

ダッチや他の登場人物は、別にカタギにコンプレックスなどなさそうだ。
自分の人生がアウトローなものになったことを、クソみたいな世界を、誰のせいでもなく受け入れ、
その世界のルールのなかで生業をもって生き抜いている。そういうところがクールだ。

ロックは「俺は、俺の立っている場所にいる。」と答える。
世の中には色んな尺度があるし、それを否定するわけではないけど、
他人の定規で自分を計っていちいち落ち込むなんて馬鹿らしい、そういうことじゃないかな。