ちょっと前だがすでに米寿を過ぎた老大家の数日間のツイート

こういうのが「若さ」だよなあ
生きたまま乾いた道端の犬のウンコみたいに干からびた犬畜生小爺には、
十回死んで生まれ変わっても辿り着くことの叶わない境地だね

〜2021年6月18日

@環望さんから「ダンスインザバンパイアバンド エイジオブスカーレットオーダー」7を頂戴読了。ケティがいう蛇の穴からの集団脱走劇が、一巻を覆って火花を散らす。三つ巴四つ巴の乱戦が管制塔の放送機器に絞られて、由紀の声がケティに届くかどうかの一点に集中する。読者をひきずりこむ技巧の冴え。

@二見書房さんに頂戴したもう一冊、額賀澪「風は山から吹いている」読了。手垢に塗れたアニメマンガ小説に溺死中の者として、肺まで届く爽やかな風で蘇生する思い。ぼくは山屋ではないが、ボロ温泉が好きだった。千畳敷カールも知っている。潔くスリムに削がれた内容を、五感に滲みこませてゆく描出力。

@加藤元浩さん「空のグリフターズ」1を頂戴、読了する。コン・ゲームの痛快さは、被害者がアホだとつまらないが、この長編、そんな低い水位で決壊する騙しでは決してない。海外ドラマで鍛えられた眼きき相手に、重奏するユニークな劇構造に着目しよう。さあ、読者は楽しく騙されます、被害総額一兆円!

@「スパイファミリー」7を読了。標的デズモンドの冷え冷えとしたオーラは敵役にふさわしいが、この作者だからどんなガセをかましてくるやら。以降の銘々伝的ミッションの中では、ダミアンの冒険と望星のひと幕はなかなか感動的だし、ボンドの暗黒の予知もおかしい。次なるクルーズ編を楽しみにしよう。

@田中・荒川コンビの「アルスラーン戦記」15を読了する。営々と一党が築いた版図をすべて父王に召し上げられ、ちゃぶ台返しされた王太子。大長編の波乱はかくありたいが、血も涙もない作者だなあと思わせてから、一党の脱走劇の幕が切って落とされる痛快さ。読者は作者の掌で一喜一憂させられるのみ。

@加藤元浩さん『Q.E. D.』18巻読了。中編二本だが、どちらも読ませる。前半の密室事件にギクリ。年内脱稿予定の『昭和36年のミステリ』が密室なので、カブッたら首吊りものだが、大丈夫だった。二本目の『学園祭組曲』の構造に感服。可奈の「思い出の箱」(1ページの大ゴマの笑顔)には感動した。

@アニメ「86」8話まで見る。いったん動き出した国家の欺瞞や謀計は転落する雪玉とおなじで、個人の正義感だの善意なんか屁の突っ張りにもならないと、戦時中に熟知させられた。86のメンバーほどの自我すらないわれわれだったから、なお怖い。昔話ではない、直近のオリンピックを参照すればわかる。