正確無比な技を誇る天才 小島 一志 弐段

色帯の頃からセンスは他の道場生より一頭地を抜いており、彼の蹴りには
天稟の才といったものが感じられた。
やがて名うての黒帯勢が小島との組手を厭がるほどにまで実力をつけていた。
私も彼とはよく組手をやったが、一度などは(距離をとられたらまずい)との一念で
遮二無二攻めたて、羽目板間際まで追い込んだところで左の正拳鎖骨打ちにいこうとすると
ゴツン!と鋭い衝撃を後頭部に感じた。
一瞬、どういうことか呑み込めなかった。組手の小島は目の前にいるのである。
彼がとっさに腰を捻って、至近距離から後ろ引っ掛けを振ったのだと、やがて悟り知らされ、
(天才だ、こいつは…)舌を巻かずにいられなかった。
大山も「一志、一志」と事ある毎に連発し、彼が所帯を持って子供を授かったときなど、
ベビー服やら生ハムを自宅に送って、それこそ目の中に入れても痛くない、といった可愛がりようであった。

某極真師範代 談