本書は、『昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実』の続編にあたる。対象年代は昭和〜平成まで。本書では松崎明を主人公に据えているが、タイトルにもあるように、松崎はバリバリの新左翼、革マル派の中心人物だった。

革マル派副議長として、倉川篤という変名も用いていた。革マル派の起源にはスターリン批判があるが、その松崎本人がJRにおいてスターリンのように独裁者として君臨していたのだから、歴史の皮肉を感じざるを得ない。

結局は松崎のこの権力志向が、自らの唱える「闘う動労型労働運動」を過去の遺物にしてしまった。

松崎は2010年に亡くなったが、存命時は松崎に対する批判はマスコミ界ではタブーであり(特に革マル派についての批判)、批判した週刊誌等に対しては組織的な訴訟を起こし、大規模な言論弾圧をも辞さなかった。

(戦前ではなく平成時代に起きた事に注目)もし本書のような内容の本が松崎存命中に出版されていたら間違いなく潰されていただろうと思われる。松崎の、味方には優しいが、敵には容赦をしない性格が窺える。


本書を読むと、松崎は常人の物差しでは測れない人物だとわかる。中曽根政権の国鉄分割・民営化に、自らの今までの言動をあっさり捨て去って協力することで、民営化に伴う7万人のリストラから組合と組合員を守るという離れ業はその一例である。

小を捨て大に就くとでも言おうか。