青森では正規軍と維新軍が死闘を繰り広げていた。
そこへ、杏菜と七海を二枚看板とする第三の勢力「常呂軍」が現れた。
カーリング女子の戦国時代は、こうして幕を開けるのだ。
常呂軍を率いる近江谷好幸は、青森の近藤学の集金システムを踏襲した。
娘二人がセクシーポーズを繰り広げる写真集を連発して、アマゾンの
売り上げランキングを賑わせた。
潤沢な軍資金にものを言わせて一大帝国を築くことに成功する好幸だったが、
娘らの技術には常に疑問符がつきまとい、後々常呂軍を苦しめることになる。
肝心な試合のキーショットの場面、固唾をのんでギャラリーが見守るそのなかで、
杏菜が放ったショットは自軍のガードを「ガッチーン」と蹴散らした。跳ね飛ばされた
常呂軍のストーンは、ハウス内のNo.1ストーンに当たって、虎の子の得点源を
無情にも場外へと導くのであった。
静まり返った会場では、杏菜の鼻水をすする音だけが響いていた。