【カーリング】楓【小説】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
小説など書いたことのない俺が
カーリングを題材に執筆してみるスレです
さわりの部分だけカキコしてみますので
ご意見、ご感想を聞かせて下さい。
基本的にSage進行でやっていきたいと思います。
では、よろしくお願いします。 学校を出て、私と杏奈は自転車でジャスコに向かった。私も杏奈も自転車
通学なのである。ジャスコに寄り道するとどちらにとっても遠回りになるの
だが、それもまたトレーニングの一環と考えることにしよう。
ジャスコの飲食店スペースは、女子高生のたまり場と化していた。私以外
の女の子も皆別腹を持っているらしく、夕方のこの時間になっても、食べて
話して笑っている。
私はハンバーガーとナゲットとコーラ、杏奈はハンバーガーとポテトとオ
レンジジュースを注文した。本当はダブルバーガーにしたかったのだけれど、
ローテーション的に今夜あたり大好きなカレーになりそうなので、シングル
で抑えておこうと考えたのだ。そう言えば、前に一度持ち帰りの時に「ハン
バーガー、ダブルテイクアウトでお願いします」と言って注文したことがあ
るけれど、普通にスルーされてしまったっけ。
私たちは売り場から少し離れた場所の、観葉植物の鉢のそばのテーブルに
着いた。
杏奈はハンバーガーをほおばりながら、顔で円を描くように視線をぐるり
と回した。
「ジャスコの中って広いよね。こんなに大きくて綺麗な大型ショッピングセ
ンターが常呂にもあったらなぁ・・・。なんせ、常呂で一番広い空間を持つ建
物がカーリングホールなんだもの、ちょっとさびしくなるよ」と言いながら
顔では笑っている。
「ふーん、でも北見まで行けばあるんでしょ?ジャスコ」
「北見にジャスコはないよ。似たような大型店やデパートならあるけどね。
それに、常呂は北見と合併したけれど、いまだに自分の地元が北見とは考え
にくいのよねぇ」
杏奈はふっとため息をついた。
そうか、杏奈にとっては常呂こそが故郷なのだ。これまで常呂町民として
育ってきて、ある日を境に「あなたは北見市民になりましたよ」と言われて
も、そう簡単に受け入れられるものではないだろう。この間までお隣同士で、
場合によってはライバル関係にあった町なのだろうし、突然パートナーにな
れと言われたって、当事者にとっては複雑な思いがあって当然だ。
それでは、私たちはどうなのだ?
突然見ず知らずの町に転校させられて、まったく面識のない子といきなり
コンビを組まされた杏奈は、私を心からパートナーとして受け入れてくれて
いるのだろうか。口にはしなくとも、心の奥底には不満が溜まっているので
はないだろうか。貧乏くじを掴まされたという思いはないのだろうか。
町の規模からして、北見市が常呂町を吸収合併したようなものと思われる。
どうみても対等な合併ではないだろう。私と杏奈も、まさに北見市と常呂町
のようにアンバランスな関係ではないか。
私は杏奈を頼りにしようと最初から当てにしているのではないだろうか。
杏奈のお荷物になっているのではないだろうか・・・。
杏奈は私の瞳の奥の揺らぎを見逃さなかったようだ。
「心配はしてないよ、北見と常呂はきっとうまくやっていける。カーリング
は二つの町の絆を結ぶ架け橋として浸透していくよ。そして、あたしと真美
も同じ・・・。ただ、これからもあたしは、常呂町出身だということを誇りに
思って生きていくのは変わらない。この気持ちは北見市と仲良くすることと
は別問題なの」
杏奈は人の気持ちが分かるやさしい子だ。私は彼女の頭の良さと、人を思
いやる心が大好きだ。
「あっ、そのナゲット残すの?だったらもーらいっ!」
杏奈は私の返事を待たずに、最後まで残しておいたナゲットを素早くかす
めとって、自分の口に放り込んだ。
前言撤回、杏奈は単なる食い意地の張った女子高生だ!
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています