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【カーリング】楓【小説】

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0001かえで ◆.sVGZg0ELQ
垢版 |
2006/03/19(日) 08:17:21ID:/tBKnlOu
小説など書いたことのない俺が
カーリングを題材に執筆してみるスレです

さわりの部分だけカキコしてみますので
ご意見、ご感想を聞かせて下さい。

基本的にSage進行でやっていきたいと思います。

では、よろしくお願いします。
0027その0 一緒スレ700 ◆6o71hPpWcY
垢版 |
2006/05/19(金) 00:51:07ID:MR4sHjnc
 生まれてこのかた、この私が、これほどまでに大量のレンズの標的にされ
たことがあっただろうか。私がこれまでにもっとも注目を集めた出来事とい
えば、ある競技大会に出場し、あれよあれよという間に3位に入賞してしま
ったことくらいだろう。その時でさえ、レンズの数はこの十分の一にも満た
なかったはずだ。

 私が今いる場所は、五輪で活躍した二人のアスリートの引退会見の席上だ。
雛壇というのだろうか、記者の人たちよりも一段高い場所に座らされている。
そして私は、こともあろうにこの二人の後継者として、私の左隣に座ってい
る少女とともに選出されたのである。目の前のテーブルにはたくさんのマイ
クが不揃いに並んでいる。この後、このマイクたちを通して、私の声が日本
中に中継されるのだ。

 腿の上で軽く握っていた手が、自分の意思とは切り離されているように勝
手に震えている。その手の上に私の隣の少女、いまや私にとってかけがえの
ない親友が片手をそっと重ねてきた。思い起こせば、この少女との出会いは、
桜が散って間もない5月初旬のことだった。
0028その1 一緒スレ700 ◆6o71hPpWcY
垢版 |
2006/05/19(金) 00:53:31ID:MR4sHjnc
 青森でこの冬一番の話題と言えば、何を差し置いてもカーリングだろう。
青森県代表のカーリングチーム「フォルティウス」が、日本代表としてトリ
ノオリンピックで大活躍し、一躍時の人となったのである。オリンピック後
に開催された日本カーリング選手権大会の期間中などは、マスコミやファン
の人たちによって青森市内及び近郊のホテルが占領されてしまった、などと
いう噂を聞いたほどだ。

 そして私、須藤真美も、この冬カーリングに関わった一人である。

 スポーツ店の陳列棚のどこを探しても冬物商品など見つからない季節にな
ろうというのに、フォルティウスの話題は尽きることがない。
 今も始業前の教室で男子が騒いでいる。「CMの小野ワロスw」とか「ゆ
りりんの胸に顔を埋めてえ!」とか「林田さんになじられたいいぃぃい!」
とか言っちゃってんの、もう見てらんない。

 かくいう私も、小野さん命なんですけどね。いやいや、小野さんなんて言
ったら罰が当たります。「菜摘お姉さまっ!」もうこれだね!
 できることならば直々に、菜摘お姉さまにタイを・・・じゃなかった、デリ
バリーを直されたい!!

「ところでよ、小野と林田がこのままチームを抜けちゃったら、補充メンバ
ーを入れないとヤバイだろ。こうなりゃカー娘も、テレビ局とタイアップし
て、全国オーディションでもやりゃいいんじゃねえの?な、いぐねいぐね
?」
 また能天気な男子がアホなこと言っちゃってるよ。モーニング娘。をパク
って、テレビでオーディションかよっ。菜摘お姉さまが仰るとおり、カーリ
ングはスポーツなんだから、勘違いしないでよね。

 そりゃ私だって、小学生の頃にはモーニング娘。に入りたくて、応募した
ことくらいあるわよ。一時審査で落とされたのは、近所の商店街に設置して
あったインスタントの証明写真ボックスがオンボロだったからという、ちゃ
んとした理由だってあるんですからね。

 それに、菜摘お姉さまはフォルティウスをやめるんじゃなくて、ちょっと
休養するだけなんだからね。必ず戻ってきてくれるんですから。
0029その2 一緒スレ700 ◆6o71hPpWcY
垢版 |
2006/05/19(金) 00:55:53ID:MR4sHjnc
「ねえ真美。あんたさぁ、フォルティウスの新メンバーに立候補してみた
ら?」
 隣の席の泰子が突然こっちに話を振ってきた。
「え、あたしが?」
「そうだよ、なんたって真美は高校選手権3位のスキップさまじゃん、うま
くいきゃリザーブくらいに滑り込めるかもよ」

 確かに私はこの冬、カーリングでちょっとばかり活躍しましたよ。たった
4ヶ月の練習期間で高校カーリング選手権大会、通称カーリング甲子園に出
場できて、ビギナーズラックで3位に入賞までしちゃいました。大会後は地
元のテレビにインタビューされたりして、ちょっぴり有名人気分も味わえち
ゃったりして。でも、それもほんの一過性のもの。今じゃ誰も私のことなん
か覚えちゃいませんから、残念!

 カーリングの技術だって、準決勝戦での一方的な展開、あれが本当の実力
なんだよね。圧倒的に有利な後攻なのに、連続スチールを決められちゃって、
もう手も足も出ませんでした。私のドローショットが下手っぴーなのは置い
ておくとしても、ドローを難しくするように確実にセンターガードを置いて
くるし、弾き出せない位置にカマーランドを決めてくるし、負けたのはもう
明らかに技術と戦術の差だよ。3位になれたからって自惚れるほどずうずう
しくないですよ、私は。

 それでも、第6エンドだったかな。サードの真理ちゃんが私の指示したコ
ースに絶妙のウェイトで投げてくれて、春香と舞っちががんばってスウィー
プしてくれて、狙った通りのダブルテイクアウト&ステイのスーパーショッ
トが決まった時の感動は、忘れられない。

 スキップって、みんなの最高の力を引き出すことが一番の喜びなんだって、
その時思った。それと同時に、連続スチールをされたのは、全部スキップの
私のせいなんだと、痛感した・・・。
 周りの人たちはよくがんばったって褒めてくれたけど、私は泣いた。家に
帰って一人になったとき、1点も取れなかったことが悔しくて、大泣きして
しまった。

 そういえばなんて名だったかな、私たちを破ってそのまま優勝したチーム
のスキップの子。同じ学年なのに、本当に凄いと思った。彼女はおそらく子
供の頃からカーリングの英才教育を受けてきたのだろうから、私のような付
け焼刃じゃどう足掻いたって歯が立たないよね。あーあ、もっと早くカーリ
ングの魅力に気付いていたらなぁ、なんて言ってもしかたないよねぇ。私も
努力しだいで、あんな凄いカーラーになれるのだろうか。死ぬ気でがんばれ
ば、追いつくことができるのだろうか。
0030その3 一緒スレ700 ◆6o71hPpWcY
垢版 |
2006/05/19(金) 01:04:17ID:MR4sHjnc
「ねえちょっと、聞いてるの。真美ってば!」
「・・・えっ?ええ〜っ、無理だよあたしなんて。まぐれでメダルもらっただ
けだもの」
 危ない危ない、一瞬別の世界に行ってたかも。この妄想癖はなんとかしな
いといけないな。

「でも短期間で上達したのは事実なんだからさ、あんたマジで才能あるんじ
ゃないの?」
「ないない。それにあたし程度の実力の人なんて、いくらスウィープしてテ
イクアウトしても追いつかないくらいいっぱい居るよっ」
「・・・真美さん、そこは笑ってあげるべきなのでしょうか〜?」
「うへへ・・・。ところでさ、今朝からあたしの後ろにあるこの机は何なのか
なぁ?」
「ああそれ。転校生らしいよ、さっき職員室で話してた」
「え、この時期に?」

 ゴールデンウィークも終わり、とっくに桜も散ってしまったこの中途半端
な時期に転校生。これは無い頭を使わずとも『訳有り』という言葉が浮かん
でくる。どんな『訳有り』なんだろうと想像する間もなく、担任の先生が教
室に入ってきた。

「起立!、令!、着席!」
 号令は私の役目だ。
「今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになった、さあ、入って」
 現れたのは女子だった。結構可愛い子だな。でも眼鏡のせいでちょっと神
経質そうに見えなくもない。あれ?どこかで会ったような気が・・・。でもそ
んなはずないよね?

「おおみやあんなと言います。父の仕事の関係で北海道から引っ越して来ま
した。よろしくお願いします」
 黒板に自分の名前を書き終え、深々と下げた顔が正面を向いた時、何故か
私と視線が合ったような気がした。それもなんだか棘があるような・・・。

 もう一度黒板を確認すると『大宮杏奈』と書いてあった。・・・大宮・・・あっ。
こんなことってあるのだろうか、つい先刻まで考えていた、同じ学年で憧れ
のスキップ、まさにその人じゃないか。ど、どうして貴方が・・・。

「それじゃあみんな、仲良くやっていこうな。席は窓側の、そう須藤の後ろ
の席だな。須藤はこのクラスの委員長なので、分からないことがあったら須
藤に聞くんだぞ。それじゃあ、この前の続きから始める・・・」

 えっ、それだけ?何の説明もなしなの?彼女は常呂町のカーリングエリー
トのはずなのに。青森に引っ越してきたのにまさかそれを先生が知らないな
んて事は・・・。
 彼女が私の横を通った時、一瞬無言のプレッシャーを感じたような気がし
た。


続くかどうか不明
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