819可愛い奥様2020/09/26(土) 19:59:00.72ID:X7F+5AtF0
「殉愛」p365〜 一部抜粋
12月25日
夜になって、大阪からKがやってきた。たかじんが、「大事な話やから、席を外してくれ」と言った
ので、さくらはマンションを出て下のロビーで待った。一時間後、Kが降りてきた。

12月26日
たかじんは、はちみつレモンを少し飲んだだけで吐き気を催すほど、体調が悪くなっていた。何も
食べられないし、飲むこともできない。ガン細胞が出す悪液質が全身に回り、心臓や肺、その他の
内臓を弱らせていたのだ。呼吸するとヒューヒューと異音が鳴り、このままにしておくわけには
いかなかった。優しく説得すると、昼ごろようやく病院へ行くことを了承した。
聖路加国際病院に着いたのは十二時半ごろだった。最初にたかじんを診察してくれた若い医師は「
肺炎の疑いがある」と言った。少し遅れて久保田医師がやってきた。久保田はカルテを見て、「
肺炎の気があるというくらいのことなので、心配するほどのことはない」と言ってくれた。「年末
年始は医者が少なくなるので、入院していたほうが安心ですよ」久保田は提案した。それはさくら
も考えていたことだった。「入院中に集中して緩和ケアをやりましょう。肺炎の気も十日から二週
間もあればよくなります。年明けに家に帰って、一月六日から在宅看護をしましょう」たかじんも
納得し、在宅看護の申し込みをした。二人は手続きをするために緩和ケア病棟に行くことにした。
聖路加病院の緩和ケア病棟は旧館にあった。(礼拝堂略)
このあと二人は入院の手続きを終え、部屋に案内してもらった。それは聖路加病院で一番高級な部
屋だった。「ここは皇室の方が使う部屋です」係の人が教えてくれた。