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京都アニメーションが襲われたという凶報に接し、いまでも、信じたくない気持ちが去りません。
 当日は風邪で伏せっていましたが、携帯電話のニュースで第一報を見て、重体者がいると知りました
。どうか助かってほしいと息を詰めて続報を待つにつれ、犠牲者は時を追って増え続け、
祈るよりほかに出来ることもなく、言葉が出ませんでした。

 京都アニメーションとは、アニメ「氷菓」でお仕事をご一緒しました。
 私は、アニメにはまったく詳しくありません。それだけに、拙作を見込んでお話を頂けたことを嬉しく思いつつも、
制作に関してはすべてお任せするつもりでいました。しかし京都アニメーション社制作陣の皆様の、
一緒に作ろうという強い熱意に打たれ、及ばずながら私も準備段階に加わることになりました。

 物語というのは得体の知れないもので、きらめきがあるお話でも、ちょっとしたことですべてが色褪せてしまいます。
制作陣の皆様は、忍び寄る色褪せを退け、物語を十全に生かそうと、懸命の努力を続けて下さいました。
 ロケーションハンティングの際に良い場所を見つけた時や、ここが小説のイメージに合う場所ですとお伝えした時など、
制作陣の方々は目の色が変わって、私などはなまなかに近寄れぬ真剣さでもって資料を集めておられました。
 プロフェッショナルと仕事をするのは快く、頼もしいことです。私は本業のため全ての局面で関わることは出来ませんでしたが、
彼らと仕事をしている間は、私が彼らの妨げにならないかと緊張しつつも、とても楽しかったことを憶えています。

 アニメ「氷菓」は、京都アニメーション制作陣の皆様の奮闘が実を結び、すばらしい映像作品になりました。そして長きにわたり、広い地域で、多くの方に愛して頂いています。
 作品が完成すればチームが解散するのはこの仕事の常ですが、それはいつも少し寂しいことです。
またどこかでお会いしましょうと言葉を交わして私は作家としての日常に戻っていき、制作陣の皆様は、次の仕事に取りかかっていきました。