169可愛い奥様2018/12/31(月) 11:46:23.44ID:vwi/bUr90>>172>>181
「殉愛」
12月25日
すでに痛み止めの薬も飲み込めなくなっていたため、座薬の痛み止めを処方してもらった。この日
もジュースをほんの少し口にしただけだった。急速に弱っていっているのが、さくらの目にもわか
った。わずか一ヵ月あまり前は本当に元気で、一緒にハワイに行く準備もしていたのにーー。
その日の夕方、たかじんはいきなり遺産の話を始めた。そのあと、エンディングノートに何を書く
か、二人で話し合った。夜になって、大阪からKがやってきた。

12月26日
たかじんははちみつレモンを少し飲んだだけで吐き気を催すほど、体調が悪くなっていた。何も食
べられないし、飲むこともできない。ガン細胞が出す悪液質が全身に回り、心臓や肺、その他の内
臓を弱らせていたのだ。呼吸するとヒューヒューと異音が鳴り、昼ごろようやく病院へ行くことを
了承した。(聖路加に)着いたのは十二時半ごろだった。最初にたかじんを診察してくれた若い医師
は「肺炎の疑いがある」と言った。久保田はカルテを見て「肺炎の気があるというくらいのことな
ので、心配するほどのことはない」と言ってくれた。「年末年始は医者が少なくなるので、入院し
ていたほうが安心ですよ」「入院中に集中して緩和ケアをやりましょう。肺炎の気も十日から二週
間もあればよくなります。年明けに家に帰って、一月六日から在宅看護をしましょう」
たかじんも納得し、在宅看護の申し込みをした。二人は手続きをするために緩和ケア病棟に行くこ
とにした。このあと二人は入院の手続きを終え、部屋に案内してもらった。それは聖路加病院で
一番高級な部屋だった。「ここは皇室の方が使う部屋です」係の人が教えてくれた。