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そうすると、本件書籍には控訴人が温井メモをねつ造したなどとの記述はないと被控訴人が主張しており、
本件記載2の中の控訴人の社会的評価を低下させる重要部分は何かについて、被控訴人の主張と当裁判所の認定との間に違いがあるとしても、
被控訴人は、その重要部分が真実であると信じたことについて相当の理由を有していたと主張しているのであり、西岡が、本件記載2を含む文書を執筆した当時、
その認識していた資料に基づき、控訴人が温井メモをねつ造し、又はねつ造されたものであることを知りながら温井に見せたと信じたとしてもやむを得ないと認められる以上、
相当性についての上記判断が左右されるものではない。
控訴人の主張は採用することができない。
(2)プライバシー権侵害について
ア、控訴人は、控訴人主張のプライバシー情報のうち、本件書籍の「「解離性同一性障害」の疑いが強い」との記述は、「疑い」とは記載されているが、
その裏付けとなる現象がその前の部分に詳細に記載されているのであるから、読者は、控訴人が解離性同一性障害であると理解するところ、
このような精神疾患の存在を明らかにすることによって得られる利益が、これを明らかにされない控訴人の利益に優越することはあり得ないと主張する。
 しかし、原判決別紙6の記述のうち、控訴人の人格が突然変わる現象について、本件小説が描く控訴人像と異なる控訴人の人となり、
特に控訴人が嘘をついていることを指摘する上で効果的なエピソードとして用いられるものであり、本件小説の検証としての意義が認められ、
公表する必要性が高いものといえること、上記現象についてのエピソードを語る者について、氏名等が明らかにされていないことは、
前記1説示のとおりであることに加え、本件書籍には、上記現象について、「事実ならば、「解離性同一性障害」の疑いが強い。が、こればかりは、取材班のような素人が、D氏の証言だけで軽々に判断できる類の話しではない」
と記載されていることも踏まえれば、このような記載がプライバシーに係る事実又は情報にあたるとしても、情報を公開されない法的利益が公表する理由に優越するとまではいえず、
プライバシー侵害として違法となのもの(原文ママ)ではないとの上記1説示の判断を左右するものではない。