障害のせいで、ひとりの女性としてマトモな扱いをしてもらえなかった過去は
ジャイ子の矜持を踏み躙る、屈辱以外の何ものでもないだろう。
多感な少女時代からずっと、社会、とりわけ一般男性に対する
身勝手な憎悪の感情を抱き続けたまま老人になれば、性格も顔も、ついでにおつむも歪むわな。

そんな不幸な境遇から現実逃避できる唯一無二の存在が
少女時代に憧れたキャンディキャンディのメルヘンチックな世界に自己投影し、現実逃避すること。
普通の女性なら、配偶者や子供、友人などと現実世界に居場所を見つけることで、
卒業するものなのだが、
その機会すら与えてもらえなかったジャイ子にとっては、壮年期に至った今でも
夢の世界に逃避することでしか、精神の均衡を保つ術を持たない。

しかし、時給200円の底辺でストレスを溜めこんでいる日常においては
メルヘンの世界に埋没し続けることも許されず、現実に引き戻され、
鏡に映るのは、顔中に深く刻まれた皺だらけの醜い妖怪のような姿…。

ストレス解消法と称し、2ちゃんでハゲに罵詈雑言を浴びせる行為も、
おそらく(ジャイ子自身も気付いていない)深層心理では、
長らく築き上げてきたメルヘンランドに浸潤してきた
汚れた現実を排除し、浄化しようとする試み、ささやかな抵抗に当たるのではないか。
即ち、薄汚い?ハゲを美しいメルヘンの世界の対極にあるミスマッチな存在と位置付け、
バーチャルの世界でハゲを叩くことが、ジャイ子の聖域(←笑)を守護することに適い
ある時から生き甲斐になってしまったのだろう。