アングル:南北統一の夢支える朝鮮「壇君神話」とは何か
https://jp.reuters.com/article/northkorea-southkorea-unification-myth-idJPKCN1MZ17D

分断された朝鮮半島において、南北統一の夢を絶やさないために、
静かだが粘り強い役割を果たしているのが伝説上、4350年以上前に古朝鮮を建国したとされる「壇君」の神話だ。

壇君神話は、金正恩朝鮮労働党委員長が9月、韓国の文在寅大統領を誘って北朝鮮の白頭山に登頂したときにも登場した。
白頭山は壇君の生誕地とされているためだ。

壇君という栄光の王が実在した、あるいは彼が築いたとされる数千年に及ぶ王国「古朝鮮」が存在したという証拠はほとんどない。

壇君が実在の人物だった可能性はゼロに近い、と研究者は語る。
朝鮮の伝説によれば、壇君は、人間に深い関心を持っていた神と、人間の女性になりたいと願ったクマとのあいだに生まれたという。

北朝鮮の公式説明によれば、白頭山は「革命の聖地」であり、金正恩氏の父である故金正日氏は、この山中で生まれた、と主張する。
歴史家の多くは、金正日氏の実際の生地は旧ソ連内だったと考えている。

1990年代半ばには、北朝鮮当局が平壌郊外において壇君とその妻の墓所を発見したと発表。
そこに白亜のピラミッド型陵墓を「再建」し、脇には荒削りな石碑と、古代の王族や咆吼する獣の像が置かれた。

壇君とは異なり、彼が建国したとされる王国「古朝鮮」については、もう少し証拠がある。

ソウルの韓国国立中央博物館には、青銅の短剣や陶磁器など、古朝鮮時代のものとされる遺物が展示され、
「歴史上、朝鮮半島に誕生した最初の国家」だったと説明されている。

館内表示によれば、古朝鮮は紀元前2333年から紀元前108年まで続き、
中国の主要王朝と「互角に渡り合えるほどの勢力があった」と書かれている。

嶺南大学のLee教授は「古朝鮮の初期は国家として認識できず、特に同質民族による国民国家ではない」と語る。
この時期はむしろ、氏族・部族社会の特徴が強かった可能性が高く、
統一された王国の形成は、そのかなり後になってからだ、と同教授は主張する。