>>403
下司や鉄面皮の話なら、警察、検事、裁判官のことも笠原和夫氏は書いとってじゃ。
「刑事という職業が下司だというのは、戦前では常識であった。最近は
テレビドラマで刑事ものが大はやりで、そんな感覚は大衆の中から消滅して
しまったらしい。それとも現代そのものが 〈下司の時代〉になってしまっているせいか。
犯罪の摘発という使命は否応なしにチンコロ的な下司根性を内包するものなのである。
武士道的な廉潔さでは、すり一匹捕えられまい。
やくざが表向きの実業として構えている高利貸し専門の商事会社の応接間などには、
地元の警察署とか府・県警本部の元刑事たちがゴロゴロしているものである。
現役時代よほど憧れていたのか、法廷の裁判官が用いるのと同じ机や椅子を自室に
据えて、ふんぞり返っている元刑事もいるという。
 これが裁判官や検事ともなると、定年退職と同時にそれまで追及の鉾先を向けて
いた暴力団の顧問弁護士に堂々と就任し、あつめておいた証拠類を武器に一変して
組織の防衛に回る。法律には触れないと言っても、あまりの鉄面皮に、当の
やくざの方が呆れたという話がある。
 だからやくざたちも春秋の行楽シーズンともなれば、マイクロバスを仕立てて
警察署の独身寮に横づけし、警察官と極道が仲良くピクニックとシャレこむ。
帰りは独身寮でスキヤキ・パーティに浮かれ、酔っ払ったやくざたちを警察官が
パトカーで家まで送ってやる。」 (笠原和夫「破滅の美学」p263〜p266)