イプシロン打ち上げ 民間衛星が軌道に

2018年1月18日 夕刊
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018011802000278.html

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は十八日午前六時六分、小型ロケット「イプシロン」3号機を、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げた。
同七時ごろ、搭載していた民間の小型地球観測衛星「ASNARO(アスナロ)2」を予定の軌道に投入。二〇一三年の1号機から三回連続で打ち上げに成功した。

イプシロンは打ち上げに関わる人員やコストを減らすため、人工知能を導入したり、パソコン二台で打ち上げを制御したりする工夫をした小型衛星向けの固体燃料ロケット。
三回連続の成功で技術の信頼性が高まった。液体燃料を使う主力の大型ロケットH2AやH2Bと並び、日本のロケットの選択肢が広がった。

1、2号機はJAXAの衛星を打ち上げたが、今回は初めて民間の衛星を打ち上げた。JAXAは小型衛星の打ち上げ需要は増えるとみており、今後の受注に弾みを付けたい考えだ。

JAXAの奥村直樹理事長は記者会見で「小型衛星の打ち上げで国際競争力の強化を目指したい」と述べた。

イプシロンは全長二十六メートルの三段式。打ち上げ費用は、前身のM5ロケットの三分の二程度となる約五十億円に抑えた。将来は三十億円ほどを目指す。
3号機では、衛星を切り離す際の衝撃を和らげるため、H2Aで実績のある火薬を使わない分離装置を初めて採用した。
さらに衛星を計画の軌道に精密に投入するため、衛星の姿勢を制御する小型の噴射装置も付けた。

アスナロ2は、NECが経済産業省の支援を受けて製造した高性能レーダーを備える。
地表にある一メートルの物体を識別可能で、電波を使って夜間や雲があっても画像を撮影できる。
NECが運用し、災害現場や森林減少の状況などを自治体や研究機関に提供する。