2018年9月号掲載論文
日本の新しい防衛戦略
―― 前方防衛から「積極的拒否戦略」へのシフトを
エリック・ヘジンボサム
マサチューセッツ工科大学国際研究センター 首席リサーチサイエンティスト
リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授(政治学)
https://www.foreignaffairsj.co.jp/articles/201809_heginbotham/
日本本土が攻撃されても、日米の部隊は中国の攻撃を間違いなく押し返すことができる。しかし、中国軍が(尖閣諸島を含む東シナ海の)沖合の島に深刻な軍事問題を作り出す能力をもっているだけに、東京は事態を警戒している。実際、中国軍との東シナ海における衝突は瞬く間にエスカレートしていく危険がある。最大のリスクは、尖閣諸島や琉球諸島南部で日本が迅速な反撃策をとれば、壊滅的な敗北を喫し、政府が中国との戦闘を続ける意思と能力を失う恐れがあることだ。日本は東シナ海における戦力と戦略を見直す必要がある。紛争初期段階の急変する戦況での戦闘に集中するのではなく、最初の攻撃を生き残り、敵の部隊を悩ませ、抵抗することで、最終的に敵の軍事攻撃のリスクとコストを高めるような「積極的拒否戦略」をとるべきだろう。ポイントはこの戦略で抑止力を高めることにある。