● 脳血管障害や 神経難病のサインを読み取る

放置すると危険な一過性脳虚血発作

神経内科では患者さまが視覚の異常を訴えられた場合、
それが脳血管障害によるものか どうか慎重に見極めます。

一過性脳虚血発作は、「脳梗塞の前触れともいえる病気」です。

片側の麻痺やしびれ、言葉の障害といった症状を示すことが多いですが、
両目とも同じ領域の 視野が欠ける、二重に見えるといった視覚障害を認
めることがあります。数分から30分、長 くて24時間以内に症状は消失し
ますが、油断は禁物です。一過性脳虚血発作をそのまま放っておくと、
15〜20%の人が3ヵ月以内に脳梗塞を発症。そのうちの半数は数日以内、
早い人で48時間以内に脳梗塞を引き起こしているからです。片目が一時的
に見えにくくなる血管の病気に、一過性黒内障があります。目の前にカーテ
ンが下りるような視野障害が特徴で、数分から数十分で症状は治まります。
しかし、一過性黒内障は血栓がたまたま脳動脈の枝にあたる眼動脈に流れた
にすぎず、脳の血管が詰まれ ば一過性脳虚血発作や脳梗塞となるので、
早めに医療機関に受診してください。

動脈硬化が原因の場合、半年以内に一過性脳虚血発作を認め、頸動脈に70%
以上の狭窄があれば外科的治療の適応があり、ステント留置術(血管にカテ
ーテルを入れ、血管を拡張しステントを留置)や内膜剥離術(血管内のプラ
ークを除去する)などの外科的治療を行ないます。動脈硬化以外に心房細動
などの不整脈でも一過性黒内障や脳梗 塞の原因となる血栓ができることがあり、
心疾患に対する検査も必要です。脳梗塞を発症 した場合、当病院では速やかに
入院精査加療を行ないます。

神経内科
早期発見・早期治療が不可欠な神経難病

神経内科疾患の中でものが見えにくくなる症状で注意したいものに、
視神経に炎症を起こす多発性硬化症があります。これは視力の低下や複視が起こるほか、
しびれや手足の脱力、嚥下障害などの症状を伴うことがあります。視神経だけでなく
中枢神経にも異常をきたす病 気で、30〜40代の女性に多くみられます。

筋肉の力が弱くなる重症筋無力症も、複視やまぶたが下がるといった目の症状が出てきます。
多発性硬化症や重症筋無力症は治癒困難な病気ですが、治療法が確立しつつあり、 患者さま
のQOL(※)改善に期待が持てるようになりました。ただ、それには早期発見、早期治療が
不可欠です。眼科疾患以外で目の症状を伴う重篤な病気には、このような神経難病が隠れて
いることもあります。目の症状でおかしいと思ったら、眼科だけでなく、場合によ っては
神経内科に受診されることもお勧めします。

※Quality of Lifeの略。人間らしく満足して生活しているかを評価する概念