日本は医療分野が先進国に比して遅れていた。(実はその状況は今でも大きく変化が無いのだが)
例えば日露の頃まで日本は盲人が多かったが、これは目に埃が入ったら、こすらずに水で洗って落とす、
という単純至極な衛生観念が無かったことによる。同じように、傷を水で洗わなかったために破傷風で死ぬ子供が多かった。

731はこの遅れた医療分野を引き上げるために構成された部隊であり、ほぼ全員が一流大学を卒業している。
他部隊に行けば誰もが中尉以上の階級を自動的に与えられるエリート集団だった。
そのためその多くが戦後、政府や教育機関、製薬会社に勤めたのは当然のことだと言える。彼らは日本医療の頭脳そのものだった。
戦中、医療技術は一種の機密であるため、なかなか欧米の先進医療技術は手に入らず、731は手探りで様々な実験をせざるを得なかった。

戦後GHQはそのあまりの日本の医療の酷さに情報を一部解禁し、旧731の面々がその技術の普及に尽力し戦後のベビーブーム、人口増加の一助となった。
そのため彼らはアメリカに対し恩を感じており、癒着とも取れる便宜を多々行ない、結果、官民一体となって肝炎やエイズなど多くの問題を引き起こした。
とはいえ、日本の医療水準を引き上げたのは紛れも無く彼らの功績であり、現在の我々はその恩恵に浴している。
近年破綻したとはいえ、世界有数の医療システムを構築したのも彼らだ。
英雄的な見方をすれば、日本が戦いをやめた後も彼らは医療という世界で戦い続けた。
731で何が行なわれていたかは今となっては推測するしかない。だが、戦後彼らが日本復興の原動力の一つであったのは紛れも無い事実だ。
その点を忘れてはならない。