あの三菱東京UFJ銀行(BTMU)が間違いない会社だというから信じてしまったが、やはり怪しすぎる」――。昨年6月にBTMUが組成した100億円規模のシンジケートローンに参加した銀行の審査担当は、臍を噛む。
融資先は「エスビーティー」(SBT)という中古車輸出業者。本社は横浜にあり、資本金は1千万円だが、2015年9月期の売上高は実に921億円(前期比5割増)もあった。アフリカ、アジア、中南米の途上国中心に40以上の海外拠点を展開し、円安を追い風に飛ぶ鳥を落とす勢いだ。 
関連会社の「オートコムジャパン」も事業内容は同じで年商300億円に達するとみられ、いまや国内最大の中古車輸出グループを形成する。 
社長の柳田裕一氏(42)はパキスタン出身。1999年に日本に帰化し、セイヤド・ヤディーク・アリィ・シャーから改名した。SBTの社名はもともと93年に「セイヤド・ブラザーズ・トラディング・カンパニー・リミテッド」として会社設立したことに由来するが、
共同経営者だった兄弟は2006年に解任され、現在の株主は柳田社長のみで「完全なワンマン経営」(業界関係者)だという。
BTMUはこのようなSBTを「メインバンクとして事業拡大を全面支援する意向」(銀行筋)で、柳田氏に潤沢な仕入資金を提供するため前述のシンジケートローンを組み、
みずほなど大手銀から地銀、信金、リース会社まで、異例ともいえる23の金融機関を巻き込んだ。さらに大手のトーマツを会計監査人
に迎え入れ、「『上場を目指そう』と熱心に社長を口説いている」(金融筋)という