4/15 - 4/21 isuta

風のように私を通過していくもの

今週のおうし座は、喉元に死者がいるよう。あるいは、自分自身をひとつの「器」とみなし、そこに宿っていく言葉を通して死者とのつながりを感じ直していくような星回り。
被災者であれ自殺志願者であれ、生きるか死ぬかというギリギリの状況にある人に対して、日本社会がもはや官民を問わずただ「がんばれ」と言うしかなくなってしまったのは、単に言葉をかける側が相手の直面している事態をめぐる想像力が乏しくなっただけでなく、そもそも死者というリアリティが分からなくなってしまったからではないでしょうか。
では、もし自分がそんな風になってしまっていたとすれば、一体どうすればいいのか。例えば、インドの地域研究を専門とする中島岳志は、ヒンディー語の与格構文という構文に言及しつつ次のように述べています。

ヒンディー語では、「私は、ヒンディー語を話すことができる」は、「私にヒンディー語がやってきてとどまっている」という言い方をするのです。「私」という主体が言語というものを能力によってマスターし、それによって私が主体的に言語を話しているのではないのです。(…)では、言葉はどこからやってくるのか。
それは、過去からであり、死者からです。過去や死者からやってきて、私にとどまり、そして私の中を風のように通過してこの口を伝って言葉が出てくる。そうとしか思えない、ということがヒンディー語の中に与格構文として組み込まれています。
ヒンディー語を勉強し、そのことを知ったときに、さすがインドだなと思いました。(『現代の超克―本当の「読む」を取り戻す―』)