古典ギリシアから

まず、「エロース(ερωs, eroos)」は、情動的な愛で、パッションとしてあり、「受苦」という面があります。これは、「恋愛」において使われる場合、こういう意味が出てきます。人が誰かを恋するとき、恋に落ちるとき、それは、理性で判断しているというより、その反対で、自分でも自由にできない、どうしようもない感情として「愛」が起こるのです。

エロースの「愛」は、人に襲いかかる愛で、暴力的な荒々しさがあるとも言えます。また、非常に根元的な感情とも言え、作為などの混じらない「純粋の感情・思い」だとも言えます。エロースは、神として扱われ、その矢で撃たれた者は、「愛の苦しみ・虜になる」とされ、エロースの愛には、神々さえ苦しむので、エロースは、もっとも古い、偉大な神であるとの考えもありました。

エロースは、激しさ故に、また精神的というより、身体を含めての全人間的情動であるので、肉体の愛を含むのが通常で、日本語で、「エロ」というと、肉体だけの、ある意味、歪んだ愛を指しますが、エロースは肉体の愛も含むが、精神の愛も含み、偉大な感情、偉大な人間の心に起こる他者への思い・情熱なのです。