8室は「バトンタッチ、継承」
 客に絵を渡す。
 客は画家の手の届かないところへ絵を持っていく。

8室は引き継ぐこと。自分の手を離れること。
8室が死を意味するのは、当主の死によって、息子が新たな当主となり
代替わりがなされるから。
8室がセックスを意味するのは、自分の後継者を残す行為だから。
映画「蛍の墓」の清太は、東京駅の片隅で、誰に見取られるでもなく
世捨て人のように死んでいったが、彼の死は8室の死に該当しない。
(映画を見た人々の心に何かを残したという意味では8室かもしれないが)

8室の遺産とは、おおよそ代々継承されるもののこと。
 貧しい父親が死んで、100万ぽっちの遺産が入ったので、パチンコに注ぎ込んだ。
こういうのは、8室で見るより、2室や5室で臨時収入を見た方がいい。
 後日、借金を抱えた母親も死んだので、相続は放棄した。
 しかし父親の死後、母親が管理していた一家の墓については、
 田舎から自分が暮らす土地の近くへと移し、供養してもらった。
こういうのは8室。

「自分の手を離れる」ことから「終わり」も意味するが、そこで全てが断ち切られる、
後に何も残らない「終わり」とは違う。「残す」ための「終わり」。

人は死ぬ。しかし人類が終わるわけではない。
ひとりひとりが死んでいかなければ、人類に進化はない。
9室の人類のために、8室で個人は死ななくてはならないということ。