寝る前にPC見ている俺の横に嫁が小箱をいくつか持ってきて
それを開いて見せてあれこれ説明し始めた

立て爪はどうしても嵌める機会が減っちゃうよね、しまっちゃう(婚約指輪)
これ、お母さんが持ってたのをもらってきたの、ルビー綺麗でしょ
これは結婚してすぐお義母さんがくれた、冠婚葬祭用ね(真珠)
これはもう少し大きいのが欲しくて私が買ったやつ、いいでしょう
これ覚えてる?貴方が海外出張の時に買ってきてくれたダイヤ
値段は安いけど、輝きはいいしデザイン気に入ってるんで毎日つけてるのよ、、
嫁の説明は更に続いた

どの一品も俺の知っている物、話ばかりだったが改めてまとめて聞くと
俺らの結婚生活を振り返っている気分になった

最後に少々傷ついた指輪を俺の前に置いて嫁が言った
これ、私と一緒に外出するときや人と会うときは付けてて欲しいの

俺の結婚指輪でした
二十年近く前に事務職から手を使う仕事に転職したんだがその仕事が指輪を
嫌う仕事だったので、それ以来指輪をつけない習慣となっていた

俺の顔を覗き込んでいる嫁の前で、ほぼ二十年ぶりに結婚指輪を嵌めようとしてみたが
俺の左手の薬指はマメだらけで関節はかなり高くなってしまっていて、まったく指輪は通らない
それを見ていた嫁が指輪を俺の薬指から抜き取り再び小箱に戻し、苦笑いで
職人の指だね、と一言

この歳で結婚指輪を再調達というのも有りなのかと思ってみるも
嫁の薬指の歴史を更新してしまうのは抵抗があるし、
俺だけ新調するのはあり得ない
さてどうしたものか