その後休み明けの月曜日に大学で嫁と遭遇。俺、再び平謝り。一方の嫁も「一昨日はお父さんがごめんなさい。
顔、大丈夫ですか?」とこれまた平謝り。そんな俺たちの様子と俺の顔の様子が気になったサークルのメンバー達に
何があったと問い詰められたので、正直に話したら何やってるんだと叱られた。
ちなみに一緒にライブを観に行った奴等に聞いた所によると、俺は酔い潰れた嫁を家まで送っていくといって、
嫁と一緒にタクシーに乗ったらしい。
なんでそのまま嫁自宅に直行せずに自分の部屋まで連れてきたんだ、俺。
というか、男が彼女でもない女をどこかに連れていこうとしたんだから、みんな止めてくれよ。
その時はそんな風に思った。

その後俺は触らぬ神に祟り無しと嫁とは距離を置こうとしたんだけど、なぜか嫁の方から懐いてきて、
そうなると俺の方もついつい構ってしまい、秋になって嫁の方から好きです付き合ってくださいと告白された。
その頃は俺の方も嫁に惹かれていたから、OKして付き合うことにしたんだけど、当然問題となるのは嫁父のこと。
ここで黙っていてばれたら絶対に許してもらえないと思って、腹をくくって交際の許可を貰うために再度嫁の家を訪れた。
当然嫁父はお前なんかとの交際は認めない絶対に許さんの一点張りだったんだけど、「お二人に認めていただけるまでは
お嬢さんには絶対に手を出しません」と言ってひたすら頭を下げて、再び嫁母のとりなしもあって、
取りあえず交際を認めてもらえた。

それからの俺はとにかく嫁父と約束したことを愚直に守り続けた。
デートは学生のうちは平日の昼間、俺が就職してからは週末の昼間にして、夕食の時間になるまでに必ず嫁を家まで送り届けた。
当然嫁に手をだすようなこともしなかった。
嫁父が怖かったということもあるけど、それ以上に俺は最低の状況から関係が始まった嫁父から信頼を勝ち取りたかったんだ。
そしてありがたいことに、嫁父は俺のそんな努力の積み重ねをちゃんと評価してくれて、
嫁と付き合い始めて二年後に「連絡さえきちんとすればいちいち私の許可を求めなくても良い」と嫁父は言ってくれて
それからは平日の仕事帰りに待ち合わせて食事をしたりすることも普通に出来るようになった。