兄は、「どうだ!俺の自信作だ!」と言って、妻の座った椅子の背もたれを回し、私の方に顔を向けてきました。

するとどうでしょう。今まで子狸みたいだった妻が、石野真子さんのような愛嬌のある可愛い女の子に大変身しているではありませんか!

私は「うわっ、可愛い」と思わず言ってしまい、そう言ってしまった自分に驚きを隠せませんでした。

その日から私は妻の事を、仲間から女の子として意識するようになったのです。


ただ私は、兄二人が別の仕事に着いていることもあり、大学卒業後に家業を継ぐため地元に帰ることになっていた事から、妻に対して付き合って欲しいと言う事が出来ずにおりました。

そんな、付かず離れずの関係のまま迎えた翌年のバレンタイン。

私は妻から「見た目と違って真面目な貴方を好きになりました。付き合って下さい」と告白されました。

私は正直に「多分、私も妻さんが好きなんだと思う。でも、私は来年には地元に帰る予定だ。付き合ったとしてもすぐに遠くに離れてしまうと判っていて付き合うのは不誠実だとおもう。だから今までどおり友達でいてほしい」と伝えました。

すると妻は「貴方が地元に帰るときは、私も一緒についていく。それ位の覚悟はしているつもりだ。仕事はどこでも有るけれど、貴方は一人しか居ない。」と泣きながら伝えてきました。

そんな台詞に心動かされ、私は妻と恋人同士として付き合うようになったのです。