学生時代に知り合ったけど、相手はさほど自分を思ってくれていなくて、
間もなく振られたよ。
しかし、4年半後に再会、その2年後に結婚。
再会したきっかけは、一通の手紙だった。
学生生活が終わり、住んでいたアパートを引き払うための荷造りをしていて、
いろいろ懐かしくなって、ふとその人のことも思い出した。
その勢いで、単なるお礼と修士修了の報告の手紙を書いたんだ。
そうしたら、予想外に返事が来て、そして、会うことになって、
さらに付き合うことになって、結局は結婚だよ。

それにしても、何でその時になって手紙を出そうなんて気まぐれを起こしたのか。
4年半も経てば、記憶の遠い彼方に飛んでいってしまっているはずなのに。
しかし、その理由は、それから30年以上経った今になってわかってきた。

大学大学院時代には、お気に入りの食堂が幾つかあった。
その中でも特段気に行っていた中華料理店が彼女の親戚だった。
それを教えてもらった時は驚いよた。
その店は、彼女と知り合う前から通い詰めていたからね。
味が抜群なので、彼女に振られてからも同じように使っていた。
「それはそれ、これはこれ」みたいな感じで。

しかし、掲示されている調理師免許の免状の名前を見ると、
「そうなんだよな、あの子の親戚なんだよなこの店」と思った。
もちろん毎回そんなこと考えたわけではないけど、
時々はそういう思いになっていた。
そうやって、4年半、細い糸がつながり続けていたのかも知れない。
いよいよ学生生活も終わるとなった時に、その糸の存在に気付いて、手繰り寄せようとしたのだろう。
やっぱり、その中華料理店の存在が、自分たちを結びつけていてくれたとしか思えない。

当然、その中華料理店とも親戚関係(義理のおじおば)になったけど、
その店はだいぶ前に高齢のため閉店した。
その義理のおばが、最近体調を悪くしたという話を知らされて、細い糸の存在が見えてきた。
遅まきながら、ようやく謎が解けたよ。

結婚30年過ぎたけど、いい嫁さんだと思えるよ。
知り合う前から、その中華料理店に通っていたけど、
それは一杯の中華丼から始まった。
余りにも美味しくて、とりこになったからな。
中華丼で結ばれたと言っても過言ではあるまい。