「この5年間ほどは、千葉県内の病院にずっと入院していました。昨秋からは人工透析を始めるようにもなった。
最近は、目もあまり見えなくなって、意識も朦朧とした状態でした。
私がお見舞いに行くと、“誰? どこ?”といった感じで、私のことさえわからなくなってしまって……」

 それ以降、北尾氏は二度と娘を認識することがなかったという。

「世間では破天荒だとか怖いイメージがあるかと思いますが、本当に優しい父でした。
入学式や卒業式などでも、“娘がからかわれるかもしれないから”と、一度も顔を見せたことはありませんでした。
幼いときにはリカちゃん人形をくれたり、私を女の子らしく育てようとしてくれていた。
父の娘でも、“顔にケガをしたら大変だから”と、格闘技系の習い事をしたことはありません。
父とはもっと遊びたかったし、一緒にお酒も飲んでみたかった。心残りばかりです」

 夫人と娘だけで家族葬を執り行い、北尾氏は荼毘に付されたという。
 晩年は病に苦しんだ波瀾万丈の人生だったが、美貌の一人娘を残せたことで、
棺を蓋(おお)いて事定まったということではないだろうか。