勝氏へ

この手紙をもって僕の横綱としての最後の仕事とする。
まず、僕への洗脳を解明するために、八角理事長にK顧問との裁判をお願いしたい。
以下に、洗脳治療についての愚見を述べる。
洗脳の治療を考える際、第一選択はあくまで説得であるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には僕自身の場合がそうであるように、
洗脳された時点で対話拒否や1秒早退をきたした進行症例がしばしば見受けられる。
その場合には、五階級降格を含む荒療治が必要となるが、残念ながら未だ満足のいく成果には至っていない。
これからの洗脳治療の飛躍は、説得以外の治療法の発展にかかっている。
僕は、君がその一翼を担える数少ない横綱であると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君には洗脳治療の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、洗脳による退職がこの世からなくなることを信じている。
ひいては、僕の洗脳記録を解析の後、君の研究材料の一石として役立てて欲しい。
記録は活ける師なり。
なお、自ら大相撲の第一線にある者が早期に洗脳され、処置不能の洗脳で退職することを心より恥じる。

貴乃花光司