≪2≫
愛知県警は
司法解剖の必要はないとしたわけだが、
この遺体の状態では、
常識的に考えてもあり得ない判断であった。
親方・山本順一の言い分を鵜呑みにしたもので、
警察と角界の馴れ合いを指摘する声もあった。

 山本順一は、
斎藤俊さんの葬儀に何食わぬ顔で参列した。
bサしてマスコミbノは、こんなこbニを言った。

「*彼は過去にマリファナも吸っていたようだ。
  入門後もタバコをやめられなかった。
  兄弟子の荷物を盗んだりもしていた」

俊さんの母校の高校教頭は彼の喫煙を否定した。
その他の内容についても真偽は不明だ。
本当に稽古中の事故なら、
亡くなった弟子を悪し様にけなすのはおかしい。
この山本の発言は、かえって彼への疑念を深めた。

山本はその一方で、若い衆たちに対して、
警察や後援会に聞かれた時にどう答えるか、
口裏合わせしていた。
だが良心の呵責に耐えかねた力士が口を開いたことで、
事件の真相が明らかになる。

この頃、俊くんは相撲に対して前向きになれず、
死の前日にも父親に相談の電話をしていた。

 6月25日、
言いつけられた仕事をしないでコンビニにいた俊さんを、
兄弟子が見つけて部屋に連れ帰った。
山本順一はすでに酔っていたが、
正座をしろと命じて説教をする最中に、俊さんは膝を崩してしまった。
それを見て怒り狂った山本は、ビール瓶で彼の身体を叩き始めた。
ビール瓶で鼻が折れ鼻血が吹き出す。
その顔面を山本は踏みつけ、「このクソガキ」と唾を吐きかけた。
「お前らもやれ!」と山本が叫ぶと、
兄弟子たちが宿舎の裏に俊さんを連れ出し、
殴る蹴るの暴行を20分以上も続けた。