半年ロムったので投下させてください。
桐野夏生『柔らかな頬』

主人公のノリコは二児の母。
夫の友人とは家族ぐるみの付き合いで、友人の別荘で休暇を共に過ごしていた。
実はノリコと友人はW不倫の関係で、家族の目を盗んで別荘で密会中にノリコの次女が失踪してしまう。
この事件で二人の情事は明るみになり、お互いの家庭はバラバラに崩壊した。
消えた次女には幼いながらに蠱惑的な魅力があり、周囲に可愛がられていた。
ノリコ自身も「居なくなったのが長女だったらとっくに諦めていた」と思う。
そこから家族を捨て男と別れ、娘を探すノリコのロードムービーが始まる。

途中、余命宣告を受けた刑事が私的に捜索に同行してくれ、風俗嬢のヒモになり果てたかつての不倫相手と遭遇したりする。

刑事と訪れた件の別荘地で、一見普通の住人である隣人たちを犯人に見立て、推理ともつかない妄想が綴られていく。
隣人たちはノリコの想像の中でそれぞれ背徳的な性癖や関係を持ち、誰もが犯人と思えるが核心には迫らない。
謎解きもないまま無為に死ぬ刑事(病死)。
そして迎えた最終章。

別荘の外で一人佇む幼い娘。
背後に人の気配を感じ振り向くと、これから起こる凶事を知ってか、さぁくびり殺してくれとばかりに自ら細い頸を差し出す…。
そんな不気味な情景で終わり。

これもノリコの妄想の一つともとれるが、今までの推理と違い犯人の容貌の描写がなく、犯人視点の娘の最期とも思える。
結局犯人の手掛かりは掴めず、娘の死だけが示唆されて終わりという最悪な結末。
実際の事件もこうして解決を見ずに風化していくのだろう。