この本、めちゃくちゃ面白かったよ

日本保守研究会メルマガの書評より

ゴジラと御真影 -サブカルチャーから見た近現代史』(但馬オサム オークラ出版)
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本書にもあるように、いわゆるオタク文化というのは七七年の『宇宙戦艦ヤマト』
のブームを起点としている。六二年生まれの著者はいわば、オタク第一世代というこ
とになる。本書は撃論ムックに掲載されたコラム、エッセイを大幅に加筆し書き下ろ
しを加えたもので、マンガ、特撮、アニメ、ロック、映画といったオタク、サブカル
的な視点から、近現代史、アジア問題、日本人論などを語る異色の一冊となっている。
撃論ムック誌上でも著者の視点のユニークさ、独特の語り口、マクラの面白さ、には
目を引くものがあったが、本書でもそれはたっぷりと堪能することができる。たとえ
ば著者は、日本人にもおなじみのアンデス民謡『コンドルは飛んで行く』について語
るふりをしながら、中共のチベット虐殺について筆を走らせる。無邪気な怪獣映画フ
ァンを気取りながら、F・キャプラの反日プロパガンダ映画『バトル・オブ・チャイ
ナ』の欺瞞性をあぶり出す。手塚治虫の『ジャングル大帝』から戦前の日本人の南方
幻想を見、アニメ『魔法使いサリー』からは昨今の行き過ぎた子供の権利問題と教育
問題を問うといった具合で、ところどころにオタクならではの豆知識や蘊蓄が散りば
められているのも読んでいて楽しい。このとぼけた語り口で語られるテーマは他に、
国旗国歌、靖国、満州、在日問題、原爆、アイヌ問題、人権擁護法、ジェンダー・フ
リー、移民問題と多岐にわたっている。わかりやすく、そして意外な譬え話を多用し
ているので、無色な人間(リベラル系ノンポリ)相手にそれらの問題を語る際のテキ
ストとしても充分活用できるだろう。

最終章はうって変わって「異色日本人列伝」。四人の日本人が登場するが、著者の中
学校の先輩でもあるという山口二矢烈士については四十ページを割く力の入れようだ。
同時代を生きた二人の先輩である吉永小百合と山口を年を追いながら対比させること
で、六十年安保前後の緊張した空気を描き出している。山口がよく言われる「狂気の
人」でも「苦悩の人」でもないことがよくわかる。

肩肘張らず、保守の知的遊戯として楽しみたい。何より、その軽妙な筆致が面白い。

http://www.amazon.co.jp/dp/4775514857