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「感情的な場面でも理性を失わない」ピアニスト・牛田智大が語る羽生結弦の「絶対的な美しさ」とは何か?
石井宏美
2024/05/13 NumberPREMIER


哀愁漂うギターの音色に合わせ、情感たっぷりに演じた名プログラム。「技術と表現を完全にコントロールする冷静さを感じる」という演技を、ピアノバージョンにアレンジした経験もある天才ピアニストが絶賛する。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2021-2022シーズン総集編 牛田智大「理性を失わない絶対的な美」)

2013年頃に名古屋でのアイスショーで羽生結弦選手にご挨拶する機会がありました。そのときにたった数分の立ち話のなかで何度も「自分はこんなものではない。もっと上を目指さなければ」と口にされていました。“一流と呼ばれる人はこれほどの向上心と成長への執着を普段から保ち続けているのか”と圧倒されたことをよく憶えています。

 '12─'13シーズンから羽生選手が2季に渡って演じたSPの『パリの散歩道』。ソチ五輪のときは、私も夜遅くまでテレビで観ていました。4年に1度の五輪、それも数分間の極限にまで凝縮された舞台での特別な演技は、息をのむほど本当に素晴らしいものでした。

良い意味での非文明的な香りが感じられる『パリの散歩道』。

 ソチ五輪後、レコード会社の強い希望でこの曲をピアノバージョンにアレンジしてアルバムに収録したことがあります。ギター演奏による原曲の響きをそのまま再現するというより、ピアノという楽器の響きの特性に合わせて曲調を調整しました。ピアノは音が鳴った後、そのまま減衰する楽器なので、エレキギターの密度の高い音を再現するのは無理があります。当時、私は原曲のメロディと和声は残しつつ、リズムやテンポを変えることによって違う雰囲気を出せるように意識しながらピアノを弾いていました。