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また一人、日本のフィギュアスケート史に名を残した選手が戦いのリンクを去る決断をした。宇野昌磨選手(トヨタ自動車)が9日、現役引退を表明した。

 予感はしていた。カナダ・モントリオールで開かれた世界選手権で4位に終わり、3連覇を逃した宇野選手の一夜明け取材でのこと。「この2年間は苦しかった」と漏らした。既にこの時には自分の気持ちの中で踏ん切りがついていたのかもしれない。宇野選手は続けた。

 「僕の本当の競技者の精神っていうのは、あの2人が(第一線の)現役を退いた時点で、結構、難しいものにはなっていたと思います」

 「あの2人」とは、2014年ソチ、18年平昌の冬季オリンピックを連覇した羽生結弦さん、そして北京冬季五輪金メダルのネーサン・チェン選手(米国)だ。

 宇野選手は2人を度々、目標に掲げ追いつき、追い越すために日々の鍛錬を積んできた。北京五輪までは、2人がいる戦いのリンクに一緒に立っていた。

 だが、22〜23年シーズンから景色は一変した。日本では鍵山優真選手(オリエンタルバイオ・中京大)ら下の世代が頭角を現し、海外に目を向ければ多彩な4回転ジャンプを操るイリア・マリニン選手(米国)という新星が現れた。ただ、そうした「突き上げ」を受けても、胸に浮かぶのはかつて抱いた2人への感情とは違うものだった。



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