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 ―ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のイライザ役を20年間600回超演じた。舞台で一つの作品を熟成させていく過程は苦しい? 楽しい?

 「両方ですね。再演に限らず、作っていくときは苦しい方が大きいですかね。歌があって、ダンスがあって、膨大なセリフがあって、その中で自分の腑に落ちて初めて発せられるものを、あれ? って思うこともあったり。でも、『あ、そうか。私の解釈が違っていたんだ、それじゃあ、こういう風にしてみよう』っていうこともありますし。そのへんは、楽しみにだんだん近づいていくんですけれども。最初すっごく楽しくて、途中すごく苦しくて、ふふふ(笑)。で、ちょっと楽しくなって。で、また、すっごい苦しくて。それで初日に向かうって感じですかね。生みの苦しみがあって、大変なのは当たり前ですね。幸せや楽しみや感動を、私もお客様からいただいていますから。白鳥の水かきと一緒ですよね。綺麗に見えても水面下は大変なことに…(笑)。そういうものだと思います」

 ―1973年に初舞台を踏んでから50年。表現すること、演じることを嫌になることなくここまで来たのか。

 「50年やってきたっていうのが、自分でもちょっとビックリしているんですけど。宝塚時代は、悩んだり、迷ったり、自分はむいてないなとか、どうしようとかはあっても、嫌になることはなかったと思います。でも初舞台から2、3年は、まだ音楽学校の延長みたいな学生気分で気楽にやってるところもありました。失敗もいっぱいありました。それから、だんだん、ちょっと自覚が出てきましたね。『真央はトップになったら失敗談がなくなったからつまらない』って周りに言われたりもして(笑)。これはプロの仕事なんだっていう意識が出てきてからは、やり甲斐と幸福感と共に、逆に怖くなったり、緊張するようにもなりました」

 ―今後やってみたいことや夢は。

 「私本当に、昔から今後の目標ってあまりないんですよ。今あることにベストを尽くすっていうことの積み重ねが、振り返ったら50年経っていたという感覚で。ただ、自分の一つ前の作品には勝ちたいと思って取り組んではきました」