>>91
糸井
そうですよね。そういう関係っていつできるんですか。ふだん、簡単に会えるわけじゃないでしょう?

羽生
ぼくにとっては幸運なことに、日本というのはアイスショー大国なんです。だから、海外のトップスケーターたちが集まってきてくれる環境にあるんですね。ですから、ぼくがジュニアの大会で優勝してそういったショーに呼んでもらえると、海外の選手とお話しさせていただけることがあって。そういう出会いやつながりについては、ぼくは本当に恵まれていましたね。それで、ジョニー・ウィアー選手だったり、エフゲニー・プルシェンコ選手だったり、本当に数多くの憧れていた選手たちと、小さいころから一緒に滑らせていただいたり、滑るだけじゃなく、空いた時間に、これはどうしたらいいんですか、とか、どういうふうに考えてるんですか、みたいな話もちょっとずつさせていただいていたので。

糸井
それはたぶん、機会があったからだけじゃなく、羽生さんとのあいだに共通の概念みたいなものがあったからでしょうね。

羽生
あ、そうですね。
糸井
でも、ことばは?

羽生
フィギュアスケートの用語って、だいたい海外と一致してるところがあって、アクセントとかが若干違うから、伝わりにくいところもあるんですけど、幼いながらにしゃべりやすかったのかなっていう感じはしますね。

糸井
そうか、専門用語が一緒だから、15歳の少年が、おとなのトップ選手とふつうにやり取りできたりするんですね。

羽生
そうなんですよ。あと、ぼくはなんかそういう交流に対する臆病さみたいなものがなくて、とにかく自分がうまくなりたいと思ってましたし、自分が憧れてて、いいなと思うものに対しては、まっすぐだったので、会える機会がそんなにあるわけではないですし、この機会逃したらもったいないな、後悔はしたくないな、っていう思いで、いろいろ聞いたりとかしてましたね。

糸井
飛び込んで行けたわけですね。

羽生
そうですね。最初は恐る恐る「サインください」とか言いながらですけど。

糸井
そこからはじまるわけですか(笑)。

羽生
はい。最初は、ひたすら、サインが欲しかったんで(笑)。スケート靴に「サインください!」みたいな感じから。