8/17朝日新聞朝刊連載企画 たぶん第三段目

FWでの練習は立った4日間。
カメ戦で先取点を取れた。
たまたまだと思うが、あえて「必然」といったのはメンタルコントロールの効果があったから。
一つ一つの試合は別物だと考えている。
だから4連敗で迎えたカメ戦も不安はなく「自分はやれる」というイメージだけがあった。
あの日は朝起きた時から点を取れる気がしていた。

それに比べてオランダ戦は、下らない試合をしてしまった。
悪い欲が出て自分は出来ると思ってしまった。
相手のCBにマークされて何も出来なかったDMFも戻ってきて挟み撃ちにされた。

次の試合の準備をする時「時間やスペースがどれだけ与えられ、相手の誰がどういう風にプレッシャーかけてくるか」というイメージから始める。
オランダ戦はその段階から甘かった。
もっと厳しい想定で準備すれば、違うプレーが出来たはず。
今から思えば、カメ戦に勝ってほっとしてしまったのだろう。

オランダに負け、すぐにデンマーク戦に切り替えようとした。
チームコーディネーターの小山哲司さんに引き留められてサポーターに挨拶したが、
本当は試合が終わったらまっすぐ控え室へ消えたかった。
応援に感謝する気持ちはもちろんある。
あったが、相手が喜ぶ所を見ても自分が悔しがっている姿を人に見られても良いことはない。

取材エリアを無言で通り抜けたのは、負けた試合についてしつもんされたり、コメントしたりする事で、
自分の心の制御が難しくなるのを避けるため。
他人の言葉も自分の言葉も、耳から入ると脳に影響を及ぼす。
誰に何と思われようが関係ない。
デンマークに勝つために、早く帰って準備を始めたい。僕はそれだけを考えていた。

でもテレビのインタビューは任務としてやらされた。
この点、日本代表の広報担当とは相当やり合った。
取材の全部が嫌なのではなく、喋れない時もある。
ぼくが大事にしている「感覚」は、なかなか理解してもらえなかった。