おもしろいことを思い出した。10年位前の高校生の時。うちの高校県立だけれど
も、地元の国立大には県下一の進学率。そのせいか、授業も各学部の入試形態にあ
わせたカリキュラムを組む変な高校だった。教育学部の入試(小学校)には、体育で
鉄棒の蹴上がりがある。そして、採用試験時だが水泳がある。そのためこの2つは
1年生の時にみっちりやらされた。水泳は問題なかったが、蹴上がりは全くだめだ
った。教官に、「自分は教育学部は受験しないので」といったら、一応順番がきた
らやさせたが、できなくても見て見ぬ振りをしてくれた。あるとき、教育実習の教
師が来た。いつものように蹴上がりでは、私はとりあえず鉄棒にぶら下がり、格好
だけしようとしたが、その大学生の実習生は、「あきらめちゃだめだ」「がんばれ」
といって何度も私にやらせた。クラスのみんなも最初は笑っていたが、だんだん私
に同情して、「もう勘弁してやれば」という視線を送っていた。結局体育の授業中
には、蹴上がりはできなかった。自分も、「ああ疲れた」というさめた気持ちで、
別になんとも思わず、次の授業へ行った。しかし、放課後その実習生から呼び出さ
れ、蹴上がりの練習をするといわれた。その当時自分は冷めた高校生だったので、
「はあ〜」って感じだったが、その実習生り気合に負け付き合った。最初はダレて
やっていたが、だんだん本気になり、1時間後やっと蹴上がりができた。嬉しかった。
それ以後蹴上がりはやっていないので、後にも先にもこれが最後だった。ここまで
は、ある意味感動的な話だが、翌日水泳の授業でどうしても泳げない奴がいた。自分
は泳げたので平気だったが、今度もそいつに特訓するんだろうなと思ったら以外にも
素通りだった。ましてや放課後の特訓もない。プールは水泳部が使うからということ
もあるのだろうが、今度はどうして?と思った。後から別ルートから聞いたのだが、
その実習生、私も特訓したことで、体育教官からひどく注意されたらしい。特定の生
徒への行き過ぎた指導はよくないとのことだったらしい。できない者にいつまでもつ
きあうことは、できる者の伸びをストップさせるとも言われたとのこと。今その実習
生は、別の高校で教員をやっている。私のことを覚えていたら是非会いたいと思う。