擬似液体層の基本的な性質
 氷の表面融解による擬似液体層の生成は,復氷現象を説
明するために,マイケル・ファラデーによって1850年に
初めて提案された。しかし,当時はそのようなアイデアを
実証するための技術がまだなかったため,その後長らく忘
れられていた。擬似液体層を実際に計測できるようになっ
たのは,1980年代になってからである。
様々な分光学的
手法を用いて,様々な温度の下で,氷表面に生成した擬似
液体層の厚みが計測された。
温度が融点に近づくにつれて,擬似液体層の厚み
がどんどん厚くなっていく様子がわかる。このことは,
我々に身近な次の現象からも実感できる。気温が大変低い
と,パウダースノー(粉雪)と呼ばれる乾いた雪が降る
。その表
面には擬似液体層がほとんど存在しないので,雪片同士は
さらさらとしていてくっつきあわない。しかし,気温が上
昇するにつれて,雪片が表面融解し,濡れてくるため,互
いにくっつきあう湿雪とよばれる重たい雪になる。