(例5)飲み込んだフッ素はまず胃の中で毒性の強いフッ化水素酸に変わり、
血液に乗って全身を巡る。フッ素は成人では約90%が尿中に排泄され、残りは
骨に沈着する。子供は、30〜40%が骨に沈着するといわれている。これにより、
骨の異常やがんの発生率が高まると考えられている。



ここでいうフッ素というのはおそらくフッ化ナトリウム(NaF)などの塩(えん)
のことでしょう(F2などのハロゲンそのものは普通手に入りませんので)。代
表的なフッ化物であるフッ化ナトリウムを例に説明しますと



NaF + HCl(胃酸)  ⇄ NaCl(食塩) + HF(フッ化水素)

高校で化学を習った人は平衡という概念を勉強したのでお分かりだと思います
がHFが生じるのは当たり前ですね。幸い濃いNaF水溶液をゴクゴク飲むわけじゃ
なく、口の中にいったん入れてはき出した残りかすが、ごくわずかに胃に入る
だけなので、濃度は極めて薄いといえるでしょう。しつこいようですが化学物
質が人体に及ぼす影響というのは量や濃度に大いに依存します。(この部分の
記述に誤りがありましたので、訂正しました。ご指摘いただきました櫻井先生
ありがとうございます。2015.9.2)



くどいですけど例え話として、アルコールは咽頭ガンの原因になる物質である
ことが知られています。要するに発がん物質なのです。お酒やみりんを入れた
料理はたとえ沸騰させて煮切ったとしても、アルコール分が若干残ります。で
は、そのわずかな残留アルコールは危険なものでしょうか?そうではありませ
んね。発がん性を発揮するのは、濃厚なアルコール水溶液を毎夜のどに流し込
み続ける場合ですよね。しつこいようですが物質の生体への影響を見るときは
濃度が大事です。