最高裁の三行判決を避けるには
元最高裁判事の伊藤正巳先生によると、民事上告審での数少ない破棄判決を除く、上告棄却の判決のうち、90%をこえるものがが、いわゆる三行判決になっているということです。
原審・控訴審で理不尽な判決な判決を受けた側にとって、最高裁はラスト・リゾートであるにもかかわらず、事実上機能していません。
最高裁での審理を何とか継続し、原判決を覆すために戦う人たちのスレッドです。 被告人 服部純也 無職
本籍 静岡県三島市○○
上記の者に対する、殺人、死体遺棄、強姦被告事件について、平成17年3月29日に
東京高等裁判所が言い渡した判決に対し、弁護人から上告の申し立てがあったので、
次のとおり判決する。
主文
原判決および第1審判決を破棄する。
被告人を懲役20年に処する。
理由
弁護人の本件上告趣意のうち、憲法違反を言う点は、実質において単なる法令違反および
量刑不当の主張であり、判例違反をいう点は、本件と事案を異にする判例を引用するもの
であって、本件に適切ではなく、また実質において量刑不当の主張であり、適法な上告理
由にあたらない。しかしながら、職権をもって調査すると、被告人に死刑を科した原判決
および無期懲役刑を科した第1審判決は是認することができず、破棄を免れない。
その理由は下記のとおりである。 一、被害者は女子短大生であったが、男遊びやコンパなどに明け暮れ、学校の授業にもあ
まり出席しておらず、本件当時も、性欲をそそるような服装で夜道を歩いていたのであっ
て、このことが本件犯行の一因となったことは明らかであるが、原判決は、被害者の生活
態度や犯行時の服装等については関係各証拠によって証明十分にあるにもかかわらず、被
害者の落ち度について全く言及しておらず、被害者の無念、被害感情を殊更強調して過大
に評価し、また、被告人に強盗致傷の前科があることを被告人の矯正可能性を否定する重
大な理由としているが、前科である強盗致傷事件について被告人は従属的立場であり、そ
の犯情も特段重いわけではないのであつて、これらの点に関する原判決の評価は到底看過
することができない。
二、死刑は、被告人の生命を剥奪する最も冷厳な刑であって、当裁判所における判例(昭和
56年(あ)第1505号同58年7月8日第2小法廷判決刑集37巻6号609頁)が示すように「死刑制度
を存置する現行法制のもとでは、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性ことに殺害された
被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状
を併せ考察した、その刑責が極めて重大であって、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見
地からも、極刑がやむをえないと認められる場合は死刑を科すことが許される」のである。
三、そこで本件についてみると、見ず知らずの被害者を襲い、姦淫した後、生きたまま焼殺し
たという行為自体は極めて残虐かつ悪質であり、遺族の被害感情も峻烈であるから、この点の
みに鑑みれば、被告人に死刑を科すことも検討に値するというべきであるが、被告人には、前
述したとおり原判決の認定に不当な点があるほか、被告人は、逮捕直後から事実をおおむね一貫
して認めており、原審や第1審、そして弁護人への手紙等においても落ち度のあった被害者に対
して、その無念を思い、真摯な反省の弁を述べているのである。 四、これらのことを総合考慮すれば、被告人に対しては、死刑を科すことはもとより、無期懲
役刑を科すことにもいささか躊躇を覚えるのであって、当時の刑法が定める最長期の有期刑を
もって臨むことが相当であると認められる。
五、そうすると、死刑に処した原判決は当然重きに過ぎ、被告人を無期懲役刑に処した第1審
判決も結局のところ重きにすぎるのであって、これらを破棄しなければ著しく正義に反する
ものと認められる。
よって、刑事訴訟法411条2号により原判決および第1審判決を破棄し、同条413条ただし書に
よって被告事件についてさらに判決する。
第1審判決が認定した罪となるべき事実に改正前の刑法を適用し、併合罪処理を行った上で、
被告人を懲役20年に処することとし、本件における訴訟費用は刑事訴訟法181条ただし書に
より被告人に負担させないものとし、主文のとおり判決する。この判決は裁判官全員一致の
意見によるものである。
ttp://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/57B55BE12C0FB3EB49256A850030A941.pdf