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【禁断】小狼×知世をひっそり語るスレ【村八分】
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0001CC名無したん
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2018/04/08(日) 23:03:53.53ID:gsYrtu+L0
小狼×さくらの公式カップルに萌える人が大多数の中、あえて小狼×知世のカップリングについて語りましょう。

一度このカップリングを語ろうものなら、しゃおさくのお姉さま方に絶対零度の視線を浴びることは必至。
変人っぷりを自覚して今まで内に秘めていたけれどツイッターなどでは語る余地もない…などとお嘆きのあなた!
溜まり溜まった小狼×知世への想い、妄想をお待ちしております。
0176CC名無したん
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2018/05/26(土) 09:08:14.76ID:8IP9rOan0
小狼と知世ならではの安心し合える関係を描いた創作小説をずっと読みたいと思っていた
その完成形に出会えた気がする
素晴らしいです、本当にありがとう
0179CC名無したん
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2018/06/05(火) 08:47:26.13ID:Mf564FkR0
知世ちゃんが小狼も撮りたがってたり園美さんが小狼にも興味もってるのは萌える
0180CC名無したん
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2018/06/14(木) 14:13:09.70ID:wNEFKr+e0
朗読会前にピアノなら大道寺のほうがと言ってたけど、知世ちゃんがピアノを弾いているor弾けるという設定って明らかにされてたっけ?
0182CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:53:05.79ID:4TBkk9+Z0
小狼は寝間着姿のままガランとしたリビングのテーブルの前に座っていた。
テーブルの上には羅針盤とグレーのクマのぬいぐるみが置かれている。
小狼は難しい顔をしていた。
これが本来の目的からは逸脱していることはわかっている。
しかし、もし今この魔法を使うことができたなら、本来の持ち主もそうしただろうことは確信があった。
意を決した小狼はぎゅっと握りしめていた右手を羅針盤の上にかざした。
念を込めて小さくを唱える。羅針盤が光を放ち、小さな光の粒が生まれた。
額に汗が浮かぶのもかまわず、さらに念を込めるとその光の粒が次々と形を変え、丸い珠となったところで小狼は唱えた。
「彼の者に極上の夢を届けよ」
小狼の言葉に珠が振動する。
「ドリーム!」
最後の言葉を受けて強い光が発現し、魔法が発動したことを知らせた。
どさっ、と小狼は背もたれに身を預けた。これでおそらく彼女は、今日は嫌な夢を見ずに済むだろう。
ひどく疲れてはいるが、嫌な疲れではない。小狼は安堵の息をついた。そして、額の汗を拭うと、静かにリビングを後にした。
0183CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:53:29.51ID:4TBkk9+Z0
「知世ちゃん、なんだか顔色悪いよ。どうかしたの?」
「さくらちゃん……。実は最近、夢見が悪いんです」
「夢?怖い夢を見るの?」
「よく覚えてはいないんですが、でも、とてもうなされて、夜中に何度も目がさめてしまうんです。それで、少し寝不足で」
「大変だね。私に何かできることがあればいんだけど」
「さくらカードが使えたら、ドリームのカードで知世にええ夢見せられるんやけどなぁ。しかし、今カードは透明になってしもてるさかい…」
「まぁ、ドリームのカードではそんなことも出来るんですの?」
「せやで。クロウもたまーにドリームつこて夢の中で遊んどったわ」
「へぇ〜。カードが使えるようになったら私もドリームでいい夢見てみようっと!」
「そらあかん。さくらがドリームつこてええ夢見てしもたら、毎朝遅刻決定や!」
「なんですって〜!?」

ベッドの上で知世は今朝のことを思い返していた。愛らしい親友と黄色いぬいぐるみのような守護者のやり取りを思い出すと自然と笑みが溢れる。
しかし、これから眠りにつかねばならないことを思うと気分が沈んだ。
また、夢を見るかもしれない。重苦しくて、何かが迫ってくるような、暗い夢。
神様、どうか今日は夢を見ずに済みますように。
見るなら、どうか、幸せな夢を。
0184CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:54:14.31ID:4TBkk9+Z0
『何か面白い記事はありました?』
テーブルの上に紅茶を置くと、知世は尋ねた。新聞を読んでいた小狼が顔をあげて答える。
『ありがとう。別に面白いというほどのことではないんだが、国際情勢のことで少し、読んでおきたい記事があったから』
『そうでしたか。李くんはいつも勉強熱心ですわね』
『これからは李家と大道寺家の両方を引っ張って行かなくてはならないからな。そのためには、いろいろ勉強しておかないと』
そう言って紅茶に口をつける小狼の眼差しは真剣で、奥に秘めた情熱が溢れている。知世はそんな小狼のことを好ましく見つめていた。
親が決めた結婚相手ではあったが、実直で、努力家な彼のことを知世は心から愛していた。
紅茶を飲み干した小狼が知世の方を見た。ぱちっ、と視線がぶつかって、二人は思わず微笑みあった。暖かな空気が二人の間を満たす。
『ところで』
『はい』
『いつになったら名前で呼んでくれるのか』
突然の問いかけに知世はさっとほおを染めた。
『……まだ、慣れませんわ』
リンゴのように赤くなって恥じらう乙女の姿に、小狼は言いようのないくすぐったさを感じた。
最初は、なぜ海を越えて妻をめとらねばならないのかと不満があった。
しかし、知世の持つするどい洞察力と並外れた包容力に触れるにつけ、小狼はこの人ならば、との思いを強めていた。
豊かな黒髪のかかる肩を抱き寄せ耳元に口を寄せてささやいた。
『いつか名前で呼んでくれると嬉しい。知世−−−−−−』
0185CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:55:04.04ID:4TBkk9+Z0
ジリジリと朝を知らせるベルが鳴る。
目を開けると見慣れた天井。
朝だ。今日は一度も目が醒めることなく眠れたらしい。
なんだろう。もう、覚えてはいないけれど、とても、とても幸せな夢を見ていた。
胸の中が暖かくて仕方がない。でも……思い出せない。
忘れてしまった甘やかな夢の名残に、知世の目から一筋の涙がこぼれた。

いつものように朝食の目玉焼きを焼く。
昨夜例の魔法を使ったにも関わらず、不思議とよく眠れた。
そのせいだろうか。なんだか心も穏やかだ。
準備のできた朝食をテーブルに運ぶと、小狼は紅茶を淹れた。
「……?」
なんだろう。この香りを知っている気がする。
その時、俺はとても幸せだった。
0186CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:55:32.48ID:4TBkk9+Z0
昼休みになるといつものように馴染みのメンバーが集まった。
皆で和気藹々と昼食をとり、雑談が始まった頃に奈緒子があるものを取り出した。
小さな、家の模型である。今度の演劇部の舞台を大道具用にジオラマ化したものだという。
「私……、私、今朝このジオラマの夢を見たような気がしますわ」
「このジオラマの?これ、昨日完成したばかりで、演劇部以外の人ではみんなが初めて見るんだよ」
「変ですわね。でも、確かにこのリビングに見覚えがあるんです。確か男の方と女の方がいましたわ。二人はとても信頼しあっていて……。とても幸せな夢でしたわ」
「すごーい、今度の劇、1組の恋人の話なんだよ。それで、物語はこのリビングで展開するの!」
「ねね、それって予知夢っていうやつなんじゃない?」
「予知夢……。夢十夜の時に習ったあれですね!」
「そうそう、予知夢といえばね!!」
「山崎くんは黙ってて!」
興奮気味に予知夢の話に盛り上がる友人たちを横目に、さくらはカバンの中の守護者にそっと声をかけた。
「知世ちゃん、昨日は怖い夢見なくて済んだんだね」
「おぅ。ゆっくり眠れたみたいでほんまよかったわ。せやけど、なんや妙やな」
「妙?」
「知世はジオラマの夢を見たんやろ?しかも、夢の内容と劇の内容が大体一致しとる。それやったら千春のいう通り予知夢やないか。けど、知世は魔力を持ってへん。誰かが予知夢を見るような力をつこて、知世に夢を見させたとしか…」
「でも、誰が?私はカード使えないし、ケロちゃんも何もしてないんでしょう?」
「わいはなんもしてへんで。だいたい、人に予知夢を見させるような魔法は高度な魔法や。そんな簡単に出来るもんやない。小僧やったらできるかもしれへんけど、でも…」
ケルベロスはそっと小狼の方を見た。小狼はジオラマを見て何か困惑したような表情を浮かべている。
「小僧でもないみたいや」
「小狼くん、どっちかというと夢でジオラマを見ちゃったみたいな顔をしてるよ」
「うーん。一体どういうことなんやろうなー」
「どういうことなんだろうなぁって、ケロちゃんが言い出したんでしょ?」
「せやけど、よおわからんしー。わいの考えすぎやったりして。あはははは!」
「考え過ぎって、もう、無責任なんだから!!」
0187CC名無したん
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2018/07/13(金) 22:55:50.38ID:4TBkk9+Z0
役目を終えて戻ってくると、使役者はすでに眠りに入っていた。
ドリームは彼の顔をじっと見た。まだ幼さの残る顔に疲労の色が見える。
新しい主にこそならなかったが、現主への献身的サポート、本人の努力や実力を以ってして彼はカード達からも一目置かれていた。
だからこそ、この異常な事態の中でカード達が彼のいうことを聞いていると言っても過言ではない。
それでなくとも、ドリームはかつて自分を封印した小狼のことを少なからず特別に思っていた。
出過ぎた振る舞いかもしれない。けれど、このようなイレギュラーな状況なのだ。
カードの自分が少しばかり勝手な振る舞いをしても主は許してくれるだろう。そして、彼も。
ドリームは対象者の額にそっと手を当て、願った。
この心優しき少年に、安息の夢を。
0188CC名無したん
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2018/07/14(土) 17:22:23.72ID:fI6YrYVr0
>>187
素晴らしいです
スレ見てたかいがありました
0193CC名無したん
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2018/08/08(水) 22:39:07.54ID:I94iJ75o0
その申し出はまさに青天の霹靂というべきものだった。
『式服の仕立てを辞退する!?』
何気ない調子で偉が切り出したのは、長年務めてきた小狼の式服の仕立ての辞退だった。
『はい。私も年をとりましたし、満足な仕事が難しくなっております。それに何より、知世様がいらっしゃいますので』
『しかし、偉……』
『お願いいたします小狼様。どうか、式服の仕立てを知世様にご依頼なさってください』
偉の表情はいつもどおり柔和なものだったが、その表情とは裏腹に、言葉と態度はきっぱりとしたものだった。
こうなってはどうなだめすかしても偉がうんと言わないことは誰よりも小狼がよくわかっている。
『そうか……』
しぶしぶと小狼は引き下がり、戸惑いを隠せないままその申し出を受け入れた。

「……と、いうわけで、今後は式服の仕立てもお願いしたい。これがその詳細だそうだ。偉から預かってきた」
「まぁ」
「心配するな。李家専属の仕立て人に頼むこともできるから、難しく考える必要はない」
努めて大事ではない風に振る舞う小狼ではあったが、知世はそう簡単な問題ではないとわかっていた。
式服は李家にとってとても大切な正装の一つだ。着る人にぴったりと誂えたもので、動きやすく、美しく見えるものでなければならない。
(それに……)
それに、式服を仕立てる、ということはただ衣服を誂える以上の意味があるはずなのに。
知世は小狼から手渡された偉のメモをじっと見つめた。
0194CC名無したん
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2018/08/08(水) 22:39:55.92ID:I94iJ75o0
「偉さん」
「これはこれは、知世様」
偉がさっと最上級の礼を取ろうとするのを押しとどめる。
「聞きましたわ。式服のお仕立てをご辞退なさったそうですわね」
「はい。知世様がいらっしゃればこの老いぼれが仕立てる式服よりもずっと良いものが出来上がると確信しておりますので」
知世は偉の言葉に悲しくなった。
小狼の好みを誰よりも知っているのは彼だ。
好み、破れやすい場所、バランス……。長年そばに仕えてきたからこそわかる事。
そして、小狼がそんな偉のことをとても大切にして頼りにしている事。
老いぼれだから用済みだ、という偉の発言は、二人が積み重ねてきた信頼のどれもを否定してしまうものだった。
「それは違いますわ、偉さん」
知世はそっと両の手で偉の右手を包み込んだ。
「あなたの主人に必要なのは正確な採寸ではありません」
知世の言葉に常に冷静な偉の表情が揺れる。
「信頼と理解と、自分を受け止めてくれる人とのちょっとした時間ですわ」
知世が包み込んだ手は、どうやってあの式服の細かな細工を施しているのか思うほど、無骨で、大きな手だった。
0195CC名無したん
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2018/08/08(水) 22:40:28.30ID:I94iJ75o0
「知世様……」
偉は後に続く言葉を紡ぐことができなかった。
特に仕立てを学んだというわけではなかったが、持ち前の器用さで小狼の式服を繕い、そして、気がつけばいつの間にか式服の全てを仕立てるようになっていた。
採寸など必要ない。ただ、ちょっとした雑談をするためだけのようなものだ。
今日も小狼様はお元気だろうか。何か困ったことはないだろうか。偉にできることはないだろうか……そんな事を思いながら採寸をし、式服を仕立てること。それが偉にとって小さな喜びの一つであった。
小狼様に大切に思う人ができて、その人はとても裁縫に長けている。それであれば、老いぼれが縫うものより、愛する人が作る衣服の方がずっと良いと思っていた。
自分はもう少し、小狼様のお役に立つことができるのだろうかーーー?
そんな偉の心の中を見透かしたように知世が言った。
「念のこもった衣服はその人を守ると言いますわ。偉さんが主を大切に思う気持ちは、何よりも強い保護となります。偉さんはとても大切な存在なんです。
ですから、どうかもっとそばにいてあげてください。お二人には積み重ねた長い長い時間と絆があるのですもの。こればっかりは、私でも偉さんにかないませんわ」
そういって微笑んで見せる知世を見て偉は思った。
よかった。
このような方が小狼様のそばにいてくださって、本当に、よかったーーー。
0196CC名無したん
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2018/08/08(水) 22:40:53.00ID:I94iJ75o0
「小狼様」
「偉、どうした」
「この間あのような事を申し上げておきながら恐縮なのですが……」
「?」
「式服の採寸をさせていただいてよろしいでしょうか」
偉の申し出に、小狼は今にも泣き出しそうな顔で答えた。
「……喜んで、偉」
0197CC名無したん
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2018/08/08(水) 22:41:24.47ID:I94iJ75o0
「小狼様、肩の動かし具合はいかがでしょうか」
「大丈夫だ。とても動かしやすくできている」
ほとんど仕立て上がった式服を、小狼が試着して偉があれやこれやと微調整を加える。今まで何度となく繰り返されてきたことではあるが、今回はいつもにも増して特別に感じる。
「ところで、偉。実は彼女になにか贈り物をしたいと思っているのだが、どんなものが適しているだろうか」
「私に知世様のご趣味はわかりかねます、しかし……」
「しかし、なんだ?」
「いつか式服の採寸にご招待してはいかがでしょうか」
「……そうだな。きっと喜ぶ」

今日もまた、小狼と偉のなんでもない会話が弾む。
そんな何気無い日常が守れた事を、知世は一人、誇らしく思うのだった。
0199CC名無したん
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2018/08/09(木) 21:05:19.06ID:5Tq4JpY/0
「開けてみてくれ」
小狼から差し出されたのはなんの変哲も無い、小さな木箱だった。
「なんでしょう」
知世は刺しかけの刺繍を置いて、小箱を手に取った。小首を傾げて箱を開けると、紫の美しいビロードが敷き詰められているほか、中には何も入っていない。
代わりに、静かな、美しい曲が流れてきた。
「不思議ですわね。何も入っていないのにピアノの曲が……。魔法みたいですわ」
「魔法なんだ。俺と偉でかけた術で曲が鳴っている」
「お二人で、かけてくださったんですか?」
「ああ。まだ俺が子供の頃、よく偉と練習した術なんだ。魔力の制御を覚えるためにな」
初めて聞く話に知世は静かに耳を傾けた。
「でも、このピアノは……」
小狼が少し赤くなって顔をそらした。
「俺が弾いた。あまり上手く無いが、それは我慢してくれ」
素敵なピアノなのに、すぐに赤くなったり照れたりするところが小狼らしい。
そんな小狼の様子に自然と笑みがこぼれる。
知世はそっぽを向いたままの小狼に聞こえるよう、言った。
「大切にしますわ……」
小狼と偉の思いやりの詰まった小箱をぎゅうっと抱きしめると、なんだかぽかぽかと暖かかった。
0200CC名無したん
垢版 |
2018/08/09(木) 21:06:32.60ID:5Tq4JpY/0
クロウカードを集めていた時から小狼を見ていた知世は知っていた。
小狼の式服がカードの攻撃などで破れたり、痛んだ時は、それが綺麗に繕われていた事を。遠目からはわからぬよう、控えめな、けれど美しい刺繍によって。
それは、本当に心のこもった仕事だった。

「以前私がコスチュームをお作りした時、ある人におっしゃっていただいたんです。思いのこもった衣服をまとえば、それは何よりも強い守りになると」

だから、知世は小狼の衣服を一人で全て作ってしまわないのだ。
小狼を想う様々な人の思いを乗せたものを着てもらうことで、より強く、より優しく小狼を守りたいと願うから。
魔力はなくても、出来ることがある。これが、知世が見つけた、一つの答え。
0201CC名無したん
垢版 |
2018/08/10(金) 03:15:30.09ID:9reNsjLa0
ここまで知世ちゃんを魅力的に描けるなんて感動します
ある意味で知世ちゃんの世界一の理解者ですね
0203CC名無したん
垢版 |
2018/08/10(金) 23:42:32.98ID:auiZbTsw0
気の向くままだいぶ書いてしまったんだけど、好意的に読んでいただいているみたいでよかった
なるべく原作・アニメのイメージから外れないように、
その上で、それぞれのキャラがもっと好きになってもらえるようなものにしたいと思っていたので
自分が書いたキャラが魅力的だと言ってもらえたのは何よりの賛辞です、ありがとう
0204CC名無したん
垢版 |
2018/08/11(土) 14:45:10.91ID:3Bpr5TxY0
たまらないですよこのSS
もっと読みたい
0206CC名無したん
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2018/08/31(金) 21:58:57.89ID:lykHlrJI0
とある夏の昼下がり。大道寺知世は期日の迫った本を返却しようといつもの図書館へと向かった。

相変わらずの暑さではあるが、空の色はどことなく秋らしさを湛え、もうすぐ訪れる新しい季節を予感させた。
てくてくと歩いていると、この暑さはいつまで続くんだろうとか、新作コスチュームには秋色を取り入れてみようとか、たわいもない考えがとめどなくが浮かんでは消えてゆく。
(そういえばあの日もこんなに暑い日で)
(さくらちゃんと図書館へ行くと李君に偶然出会って)
(みんなで「仔豚物語」とカードを探し回ったんでしたわ)
知世はみんみんんとうるさいセミの声の中で、遠い夏の日の一幕に思いを馳せた。
本を探して駆け回り、「MOVE」のカードの封印に成功したあの日。
宿題を仕上げるためにさくらと図書館を訪れた知世は、同じく宿題をしにきていた小狼と鉢合わせたのだった。
知世たちに自習室を譲った小狼は、外国語のコーナーで本を読んでいたとケルベロスが言っていた。
(外国語のコーナー、たしか、この辺にあったと思うのですが……)
知世が足を止めて図書館の方に目をやると、ガラス越しに見慣れた髪がサラサラと揺れていた。
0207CC名無したん
垢版 |
2018/08/31(金) 21:59:23.06ID:lykHlrJI0
「こんにちは、李君」
声をかけられた主は一瞬驚いた表情をしたが、すぐに優しい眼差しを向けてきた。
「大道寺」
「また、読書感想文ですの?」
本人にも覚えがあるのだろう。知世の言葉に小狼は小さく笑った。
「いや、今日は読書感想文じゃない」

昼下がりのカフェテリアは人気が少なく、ゆったりとした時間が流れている。
知世は幾冊かの本を借り出した小狼と、小さなテーブルで向かい合っていた。
「ずいぶんお借りになったんですのね」
「まあな」
日本の歴史、世界の歴史、地理の本、それに、なぜか苗字の事典。
「予習なんだ」
パラパラと本のページをめくって小狼が言う。
「予習、ですか?」
「あぁ。一応香港でも勉強をしてはきたが、やはり日本の歴史となると地理も、人名も一筋縄ではいかなくて」
流暢な日本語を操り、すっかり日本に馴染んでいるように見える小狼だが、やはり香港で生まれた彼にとって日本の歴史や日本人の名前は簡単なものではないらしい。
「だから、事前に目を通しておくようにしているんだが、2学期は範囲が広いからな。量が多くてなかなかやっかいだ」
ふぅ、と小狼がため息をつく。かなりの苦戦を強いられているようだ。
「よろしければ、お手伝いしましょうか?」
思いがけない言葉が口をついて出た。
「え?」
「本で調べるよりも、早いかもしれません。……あの、ご迷惑でなければ、ですが」
知世は小狼の方をそっと伺った。胸がドキドキする。こんなに大胆な提案をするなんて、変に思われないだろうか―――?
「いいのか?」
そんな知世の心中を知ってか知らずか、小狼は目を輝かせた。
「本当に、いいのか?そうしてもらえると、とても助かる。ただ、今週はサッカー部の助っ人やらで日曜日くらいしか時間が取れそうにないんだが…」
どうだろう、という表情で小狼が知世の顔を見る。
「大丈夫ですわ。日曜日はコーラス部の練習もありませんし」
知世の答えに小狼が相好を崩す。
「ありがとう。よろしく頼む―――」
0209CC名無したん
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2018/09/02(日) 00:40:26.41ID:QoeOYjQf0
当日は幾分暑さの和らいだ過ごしやすい天気だった。
早く着いたので、自習室の席をとっておく、という小狼からのメッセージを頼りに自習室エリアを歩いていると、
「大道寺!」
と声がかかった。
「李君!」
パタパタと走り寄ると、すでに机の上には小狼の勉強道具が広げられていた。
「すみません、お待たせして」
「大丈夫だ。約束の時間までまだ10分ある。それより、今日は、貴重な時間を割いてもらってすまない」
「とんでもありませんわ」
挨拶をすませると、二人は早速席に着き、各々が持ち込んだ課題に黙々と取り組み始めた。
夏休みが終わった図書館は静かで、ひんやりとした空調が心地よい。窓から差し込む光や木々の影が、優しく知世と小狼を包み込んでいる。
時折、小狼が知世に人名の読み方を聞き、知世が小狼に英語の問題を尋ねる。
二人はお互いの質問に真剣に答え、そして、十分な答えが得られると、静かに喜びを共有した。
そうして、1時間ほどたった頃だろうか。
バタバタと騒がしい足音がし、小狼と知世が勉強する自習スペースをひょいと覗いて通り過ぎてゆく者があった。
「なぁんだぁ。さっきの男の子、彼女連れかぁ!」
「ちょっと、声大きいよ。一応ここ自習スペース!でも、可愛いかったね、あの彼女!」
「「!!!」」
知世と小狼の顔が一気に赤くなる。
「お、お知り合いですか?」
「あ、いや、さっき、大道寺が来る前、一緒に自習室を使わないかと声をかけられたんだ。もちろん、断ったんだが……」
真っ赤になった小狼が気まずそうに言う。
「そ、そうでしたか」
知世もなんだかいたたまれないような気持ちになって、小狼の方が見られない。
「でも、今の方達、もうお帰りになったみたいですし、気にすることはありませんわ。それより、予習の方をしっかりやってしまわないと……」
知世が必死で言葉をひねり出し、
「そ、そうだな」
と、小狼も頷いた。
0210CC名無したん
垢版 |
2018/09/02(日) 00:40:54.46ID:QoeOYjQf0
予習を続けよう、と言ったものの、小狼の視線が教科書に向いてしまうと、知世はじっと小狼を見つめた。
(こうして見ると、とても綺麗なお顔立ちをしていらっしゃいますわ。他の女の子が放っておかないのも、無理はないかもしれません……)
教科書に文字を書きつける真剣な表情に、小狼の長い睫毛が揺れて、さっきの女の子たちの会話が蘇る。
と、急に小狼が知世の方を見た。
「なんだ?」
「い、いえ」
「でも、見てただろ」
「いえ、なんというか、あの……、あの、ひらがなが」
「ひらがな?」
「はい。以前年賀状をいただいた時にひらがなは苦手だとおっしゃっていましたのに、ずいぶんお上手になったなと思いまして」
我ながら苦しい言い訳だと思う。が、小狼はああ、という表情を浮かべた。
「これか。大道寺に比べたらお粗末なものだ」
「そんなことありませんわ。大きさも揃っていますし、人前に出しても恥ずかしくないと思います」
「そうか?」
「ええ」
「それなら良かった」
「……?」
「いや、なんでもない!!」
小狼の顔がさっきの女の子たちの会話を聞いた時のように赤くなった。
ただ字の話をしていただけなのに、一体どうしたというのか。
首をひねる知世ではあったが、また小狼から、何を見ているのか、と聞かれては敵わない。ふるる、と疑問を頭から追い出して、続きの問題に取り組み始めた。
0211CC名無したん
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2018/09/02(日) 00:41:16.16ID:QoeOYjQf0
妙な横槍が入ったせいか、幾分ギクシャクした雰囲気になってしまったものの、夕方には二人とも各自の目標を達成することができた。
「今日はありがとう。大道寺のおかげで2学期もなんとかなりそうだ」
「こちらこそ色々教えてくださり、ありがとうございました。すごく勉強になりましたわ」
「いや、大したことはしていないから。それより、これ……」
小狼が小ぶりの包みを差し出した。
「フルーツケーキなんだ。今日焼いたばかりだから、明日の方が味が馴染んでいいと思う。良かったらもらってくれ」
包みからは、香ばしい良い香りが漂ってくる。
「まぁ、お気遣いありがとうございます。お料理上手な李君のことですわ。お味は間違いありませんわね。おすすめにしたがって明日以降に頂きたいと思います」
小狼が差し出す包みを丁重に受け取ると、知世はぺこりとお辞儀をした。
「では、また学校で」
「あぁ」
軽く手を振って小狼が知世を見送る。
あっさりとした別れだ。けれど、手を振る小狼の姿が、いつまでも胸に残って、今日という日がとてもいい1日だったことを象徴しているようだった。
0212CC名無したん
垢版 |
2018/09/02(日) 00:42:39.39ID:QoeOYjQf0
今夜の知世は少し夜更かしだ。
『当日1番にお祝いするから、ぜったいぜったい起きててね!』と宣言した親友から、日付をまたいですぐに連絡をもらうことになっている。
今日の日はまだ少し残っていて、後数分で一つ歳を重ねるのかと思うとなんとなく名残惜しい。
ぼんやりと物思いにふけっていると、ふと小狼からもらったフルーツケーキのことが思い出された。
明日以降が食べ頃だ、という言葉を受けて、机の上に置いたままにしていた。
せっかくだから、さくらちゃんと一緒にいただいてもいいかもしれない。
そう思った知世は、まだ時間があるのを確認してベッドから抜け出した。フルーツケーキは、綺麗な紫色の薄紙に折り目正しく包まれている。
(李君らしい几帳面さですわ)
丁寧にその包装を外すと、セロファンに包まれて、焼き目の綺麗な、これまた折り目正しく焼かれたフルーツケーキが出てきた。
と、一枚のカードが滑り出てきた。

『誕生日おめでとう 
        李 小狼』

知世はあ、と思った。
  『―――そんなことありませんわ。大きさも揃っていますし、人前に出しても恥ずかしくないと思います』
  『―――そうか?』
  『―――ええ』
  『―――それなら良かった』
  『―――……?』
  『―――いや、なんでもない!!』
昼間彼が言った『それなら良かった』という言葉はきっとこの事を指していたのだろう。
自分の誕生日を覚えていてくれただけでなく、きっと心を込めて丁寧に書いてくれたのだろう。苦手なひらがなまで全部。
(日本語の「おめでとう」は、漢字では書けませんものね)
英語でもなく、中国語でもなく、日本語という自分の母語を尊重して書いてくれたこと。
それはまさしく、日本に生まれ、日本人として生きる自分の誕生を心から祝ってくれている小狼の気持ちそのもののように知世には感じられた。
0213CC名無したん
垢版 |
2018/09/02(日) 00:42:59.08ID:QoeOYjQf0
「カチッ」
時計の針が12時を指した。
「プルルルルルル―――」
「はい、知世です」
『あ、知世ちゃん?さくらです。お誕生日おめでとう!!』
「ありがとうございます、さくらちゃん」
『わいもおるでー!めでたいなぁ、知世、はっぴぃばぁすでぃやぁぁぁーー!!』
「まぁ、ケロちゃんも。ありがとうございます」
夜中にも関わらず元気な二人の祝福に、知世も自然笑顔になる。
『知世ちゃん、今年も私が一番にお祝いしてあげられたかな?』
『一応知世はさくらの友達やさかいな。わいもおるけど、一番はさくらに譲ってやってんねんでーーー!』
『ありがとう、ケロちゃん』
「ええ。今日一番にお祝いしていただきましたわ」
『やったー!知世ちゃんの方がお姉さんになっちゃったけど、これからもずっと仲良くしてね』
「もちろんですわ。こちらこそよろしくお願いいたします」
元気なお声でお祝いしてくださったのはさくらちゃんが一番最初でしたわ。
でも、今年の一番は―――。

誕生日という特別な日。知世の枕元には、お祝い一番乗りのカードが寄り添っていた。
0215CC名無したん
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2018/09/02(日) 21:44:52.02ID:RpkiyTy70
いやー、ムーブの話は大好きなんだよね
それと絡めて、こんな素晴らしいお話を読めるなんて最高ですわ
夏も終わりだけど季節ごとに萌えさせてもらってありがたい
0217木之本さくら
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2018/09/28(金) 16:46:23.22ID:J4WgMtiD0
過疎りすぎ
0225CC名無したん
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2018/11/03(土) 15:33:06.76ID:+A7a7sw10
さくらちゃんに隠れて爛れたセックスしてそうでいいよね
0226CC名無したん
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2018/11/13(火) 20:32:54.47ID:OaUoAZth0
大道寺家の更なる繁栄ために政略結婚が決まった知世
心通わない、何とかという御曹司に処女を捧げるのだけは嫌だった
そして、ふと脳裏に浮かんだ小狼の元へ……
0231CC名無したん
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2018/12/08(土) 09:35:23.38ID:BK8IWv820
ほんのり二人が見つめ合ってるのがまた良いな
0232CC名無したん
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2018/12/09(日) 11:32:56.71ID:EfYELDnv0
さくらちゃんには内緒ですわ
0233CC名無したん
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2018/12/11(火) 06:23:59.49ID:q2kXykkl0
>>231
本当だw
0234CC名無したん
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2018/12/23(日) 07:09:35.84ID:i1kTjO6o0
>>225
さくらとは違った安らぎを覚えられる満足感と背徳感の狭間で、ただ快楽に溺れてほしい
0235CC名無したん
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2018/12/29(土) 09:01:56.95ID:VvAU3wmf0
しゃおともR18ってどこで読めるの…
個人サイトが軒並み見れなくなってきてるから困る
0239CC名無したん
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2019/03/10(日) 16:31:25.08ID:/eUXoZBH0
ほっしゅほっしゅ
0240CC名無したん
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2019/03/23(土) 09:43:49.66ID:Wg6bAV7f0
しゃおとも考える人自分以外に結構いて驚きだし嬉しい
0242CC名無したん
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2019/03/27(水) 00:08:47.04ID:6+xPc2oz0
旧作59話の「さくらと知世とボールの罠」で小狼×知世にハマった
「自信を持ってください」と励まされた小狼はさくらを差し置いて知世に見惚れてるよね
0244CC名無したん
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2019/04/01(月) 11:46:45.44ID:Lqc9VSGT0
>>240
自分もだ
0245CC名無したん
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2019/04/22(月) 23:58:33.17ID:fniIwIVw0
ふと。
振られたさくらが弾かれる先?に苺鈴はありだったりする?
0248CC名無したん
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2019/04/24(水) 00:21:42.21ID:vphM/Xoa0
むしろラブストーリー展開出来るように出来る人人っている?
よしやっちゃるわ、ってさわり程度でもチャレンジ精神を出して欲しい気もする
勿論、このスレでは小僧達がメインテーマなんだけどね
0249CC名無したん
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2019/05/08(水) 22:20:00.01ID:LNpCH+jT0
小狼x知世は、しゃおさくが続いている前提で知世にも惹かれていくという嗜み方が多いから、そもそもさくらがフラれるという発想にならないんだな
0250CC名無したん
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2019/05/11(土) 10:36:52.19ID:xGeJ9ZQG0
うーん・・・
さくらは必ず小狼を選ぶそうだから「さくら→小狼」は確定だろうけど、逆はどうかな
0251CC名無したん
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2019/05/11(土) 22:48:57.76ID:N7a6ZJhi0
「さくらちゃんのことが一番な李くんが素敵ですわ」
という視点が尊い
0253CC名無したん
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2019/05/13(月) 23:17:32.52ID:Mf7a3JFs0
何だか「さくら愛され展開」の方に誘導されてる気がする…
ここは小狼×知世スレだし、しゃおさく前提とかあまり考えなくていいんじゃないかい?
0254CC名無したん
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2019/05/18(土) 20:46:35.14ID:03uQ5BV30
>>253
どっちかと言えば同意だな
知世たちがただ浮気な関係に燃えてしまうネタならしゃおさく前提でもいいが、それを超えてカポー成立過程まで考える部分を否定してはならん
小狼×知世スレなんだから


だから、少し前にあったさく苺?
成立で退路を断つのも自分はありっちゃアリ
0255CC名無したん
垢版 |
2019/05/20(月) 23:42:18.64ID:LkYE44iE0
小狼の浮気や二股はちょっと想像出来ないなぁ
交際中に他に本当の好きな人が出来たら、まず別れてから本命に向かいそうだから
苺鈴の時みたいな感じで

さくら以外の人を選ぶ小狼、は十分有りだと思います、ハイ
0256CC名無したん
垢版 |
2019/05/26(日) 21:30:03.55ID:SGXdGoPG0
凄い家の跡取り同士ってのが良い
0257CC名無したん
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2019/06/03(月) 22:42:55.17ID:OicnfUSL0
基本ルートを考えてみたいけど
どっちが主導権握るのがもえる?
0259CC名無したん
垢版 |
2019/06/07(金) 00:39:30.92ID:VQiURjJZ0
あえて主導権を譲ってあげている知世ちゃん、をいつの間にか余裕で包み込む程の包容力を身に着けた小狼
に主導権を握られる事に喜びを覚える知世ちゃんがだな…
0260CC名無したん
垢版 |
2019/06/16(日) 02:08:02.62ID:XfC3UT1P0
この二人は、恋人ってよりシャアとララァの様な関係(それって恋人やんけ!)でいてほしい。
恋人ポジはさくらちゃんでもええけど、知世ちゃんは辛いことを何でも相談できる、小狼君のお母さんポジがいいね。
取り敢えず早く二人は公式でも下の名前で呼び合ってくれよ。でもそういうエピソードを作ったら恋愛っぽくなっちゃうのか。
0261CC名無したん
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2019/06/25(火) 12:42:36.47ID:GOeVdryv0
ケロちゃんとさくらってかわいいな。
0263CC名無したん
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2019/07/30(火) 05:26:12.24ID:fdgea/za0
>>260
知世にきょうだいがいて、その子とも仲良くなったら名前で呼ぶしかなかったのになあ
そして「李くんが名前で呼んでくださるなら私も小狼くんとお呼びしていいですか?」みたいな!
小狼「かぁ??/////」みたいな!
0264CC名無したん
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2019/08/24(土) 12:21:28.59ID:kol2bugt0
さくらのひつじ注意報でケロが炎を吐く時に知世を庇うシーンが好き
あの後もずっと庇い続けてたんだよね
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