宇宙戦艦ヤマトが戦艦大和の残骸の中から出てこなければ鳴らない理由
それはズバリ、戦艦大和からヤマトへの「継承」を、ビジュアルな形で直接的に描写する
ためである
「宇宙戦艦ヤマト」という作品は、日本の無惨な完敗に終わった太平洋戦争をスペース
オペラの形で再現するというコンセプトのアニメであった  遊星爆弾はB29、真っ赤に
干上がった地球は、大戦末期に空襲で黒こげにされた日本の暗喩とも言える
となると、そこから人類最後の希望を託され旅立つのは、地球防衛軍(=日本軍)最後の
戦艦・ヤマト以外ではありえない

現実の戦艦大和は、太平洋戦争末期に口先と自己保身だけの軍上層部が立てた、 無謀で
無意味なバカげた作戦に従軍させられ、ほとんど何もできずに沈没させられた
ヤマトはその戦艦大和の無念さを晴らすべく、全人類(=日本人)の命運をかけたロマン
あふれる大航海に出たのである
であるで、過去の無念を赤さびた残骸になぞらえて、身にまとわりついていたそれを
敢えてバラバラと脱ぎ捨てるところを見せつけてから、颯爽と飛び立つ必要があったの
である
よその場所で姿形だけ似せて作った新造艦…では、そうはいかない  朽ち果てた戦艦大和
がその過去を脱ぎ捨て、新たな姿に生まれ変わって再び 立ち上がる…というコンセプトを
あれほど的確にビジュアル化した演出はないであろう