<コロナ禍で鮮明な日本経済の出遅れ>

新型コロナウィルスの感染拡大は、世界全体に対して同質の試練を、ある意味公平に、かつほぼ同時期に与えたという点で珍しい現象だった。
そして、その禍に対するそれぞれの国の対応力の差が、様々な数値、言い換えれば成績として、明確に現れたという点でも、通常の地政学的リスクとは大きく異なる。

今回、日本はいつの間にか世界からかなり遅れをとった国になっていることが世界に対して明らかになってしまった。(コロナ前から気がついていた人も、多かったのかもしれないが)。
世界の実質国内総生産(GDP)は既にコロナ禍前の水準を回復しているが、日本はまだ回復できていない。これもGFC後と同じ現象だ。

日本の力が弱いなら、円安になるのではないかと思われるかもしれない。しかし、円相場のメカニズムはそのようには働かない。経常赤字国の米国の通貨ドルと、経常黒字国の通貨円の間には、通常、多額のドル売り/円買いの実需がある。

しかし、日本が元気で経済に活力がある時には、そうした実需のドル売り/円買いを跳ね返すだけの対外投資フローが発生し、ドル/円相場を円安方向に押し上げる。一方、日本に元気がなく、経済の活力が失われてくると、跳ね返すだけのリスクも取れず、実需のドル売り/円買いに押されるがままに円高になる。

日本経済が相対的に弱くなってきた時に円は強くなるのが過去の経験則であり、それは経常黒字国・対外純債権国の宿命なのかもしれない。