宮崎
 僕は、本当は全部日本人にしたかったし、日本人に出来ないのなら同国人で、
言葉の問題とかそういうのは全部忘れてね、 色分けのために髪の毛の赤いやつも出て来るけど、
基本的には異人種が入って来るという話にはしたくなかったんです。
日本が沈んで、房総半島の先の方が残ってるとか、 どっかのコンビナートが残ってるとか、
そのくらいのつもりでやった方がいいと思って。 要するに距離の問題は、交通手段がなくて、
未知の世界になれば、 遠く感じるようになりますから。ハイハーバーなんかも、 本当は麦畑じゃなくて、
水田で米作ってる方がいいと思うんだけど、 それをやろうとすると、その前の問題がありすぎてね。
そういう世界を作ろうとすると、あまりにもルールが要(い)るんです。
それをやって行くには制作にゆとりがなくて、 スタッフみんなの共通語で世界を作って行くしかないから、
ああいうふうになってしまったんですけどね。 西部の開拓時代みたいになっちゃったのは、どうも抵抗があるんです。
ダイスじゃなくて団十郎でね、バラークーダ号じゃなくて弁天丸でね、 フォークとナイフじゃなくてハシと茶碗をもってね、
「メシーッ」って言ってる方が、あの人物にぴったりだと思うんですよ。


−− ラナに対する思い入れはよく判るんですけど、後半になると、 モンスリーの比重が増して来ますね。

宮崎
思い入れしないと出来ない。 その人物にのめり込んでいっちゃう。 そうすると可哀相(かわいそう)になってきましてね。
モンスリーなんか涙が出そうなほど可哀相になって来るんですよ。すると、 何とかしてこの女を助けなければ
ならないという気になって来るんですね。 助けようとすると、コナンに惚(ほ)れてくれればいいけどね、 これはラナがいるし、
駄目なんですよ。

−− あの少女時代の構想は前からあったのですか。

宮崎
まあ、種明かしをしてもしようがないんだけど、 モンスリーは全部忘れていたと思うんですよね。
思い出したくないことは忘れますよね。でも、ハイハーバーの、あの緑を見て、 気落ちして、ガンボートを沈められて、
ああ、 ガンボートに助けられたなあってことを思い出してね、 そうしたら子供時代を思い出すかなと思って。